THOMAS HARDY 




 作家としてだけでなく、詩人としても有名なイギリスの作家。
 1840年にイングランドの小さな村で生まれた作者は、幼い頃から勉強好きで成績もよかったが、経済的な事情によって進学を断念し、16歳のときに地元の建築家に弟子入りして働き始める。その後ロンドンに移り住んだ作者は、建築家としての仕事を続けながら大学に入学し、創作活動を開始する。しかし、ロンドンでの生活で病気を患ったため、故郷へ帰って仕事を続けることになる。1871年に発表した処女作を機に専業作家としての活動を始め、多くの作品を発表する、しかし、作者の代表作である「Tess of the d'Urbervilles」や「Jude the Obscure」が世間から非難を受けたため、その後は詩作に打ち込み、1928年に87年の生涯を閉じる。
 19世紀に活躍したイギリス人作家ということで、当然ながら文章の難易度は非常に高い。文中に出てくる単語の難易度が高いのはもちろんのこと、文章そのものも凝った表現が多く、とても気軽に読めるようなレベルではない。ということで、ペーパーバック初心者にはまったくお勧めしない。




TESS OF THE D'URBERVILLES   10/08/28 更新

 読み易さ 
 面白さ   

イングランドの寒村に生まれたテスは、無精者の父親と多くの子供たちの世話に追われる母親を懸命に助ける純粋な少女だった。ある日のこと、生活に窮した両親は、親戚筋にあたる裕福なダーバーヴィル家を訪ねて援助を求めるようにテスを説得する。嫌々ながらもダーバーヴィル家を訪れたテスは、その家の息子であるアレックに見初められ、住み込みで働くことになる。しかし、アレックに処女を奪われたテスは、腹を立てて実家に帰ってしまう。やがてアレックとの子供を出産するが、間もなく子供は死亡する。傷心のまま大きな酪農家で住み込みの仕事を始めたテスの前に、農業の修行に来ていた牧師の息子エンジェルが現れ、二人は激しい恋に落ちる。自分の過去を恥じるテスは、エンジェルの求婚を受け入れようとしないが、最後にはエンジェルの熱意に打たれて求婚を受け入れる。しかし、結婚式を挙げたその日の夜に、テスは自分の過去を打ち明けてしまう。その事実を受け止めきれないエンジェルは、テスを残したままブラジルに旅立つ。悲しみに打ちひしがれるテスの前に現れたのは、過去の自分の過ちを悔いて改心したアレックだった。

 なんとも救いのないお話だ。テス自身は何も悪いことをしていないのだから、途中の展開はともかく、最後だけでもハッピーエンドにしてあげればいいのにと思う。しかし、このラストはとても悲しくて、少しだけ泣いてしまった。
 いろいろなことを考えさせられる作品だが、秘密を打ち明けることの難しさを改めて感じた。この秘密を打ち明ければ相手にも嫌な思いをさせるとわかっていながら、多くの人は秘密を隠し通すことの重圧に負けて打ち明けてしまうのだろう。残念ながら、テスもそういう普通の人間だったということだ。自分ひとりの胸にしまっておいてずっと苦しみながら生きていくのか、秘密を打ち明けて嫌な思いを二人で半分ずつ負担してくのかを判断するのは難しいと思う。
 それにしても、エンジェルの腰抜けぶりには読んでいて腹が立った。悪役として描かれているアレックのほうがずっと好感が持てる。というか、なぜテスがアレックをこれほど嫌うのか、最初から最後までよくわからなかった。同じ男子としては、アレックの方がエンジェルよりもずっと魅力的な人間に見える。



JUDE THE OBSCURE    09/11/08 更新

 読み易さ 
 面白さ   

11歳の少年ジュードは、幼い頃に両親を亡くして叔母の家に引き取られていた。家の手伝いをしながら夜間の学校に通うジュードは、校長先生のフィロットソンが学校を辞めて隣町のクライストミンスターに引っ越すことを知って悲しむ。しかし、クライストミンスターの大学に入学して司祭への道を志していることをフィロットソンから聞いたジュードは、自分も学問に対する憧れを抱いてラテン語の勉強を始める。やがて成人したジュードは、村の娘であるアラベラの計略にはまって結婚するが、すぐにアラベラに愛想を尽かされて別居してしまう。その後、学問への思いを断ち切れないジュードは、クライストミンスターで石工の仕事を見つけて恩師のフィロットソンを訪ねる。クライストミンスターで従妹のスーと知り合ったジュードは彼女に強く惹かれていくが、そんなジュードの思いを知りながら、スーはフィロットソンと結婚してしまう。それでもスーのことを忘れなれないジュードは、一途に彼女を思い続ける。

 英語の独習を始めたばかりの頃に挑戦して、30ページを過ぎたあたりであっさりと挫折した経験のある作品。15年ぶりくらいにチャレンジしてみたところ、難しいなりにもなんとか読むことができた。
 それにしても、まったく救いのない物語だ。この作品を読んだ後では、「努力すれば必ず報われる」などという無責任な言葉を使ってはいけないと感じるほど、ジュードは最後まで報われない。これほどまでにジュードが報われない原因の多くがスーにあることは間違いない。自分に誠実であろうとするあまり、結果的に間違った道を選んでしまうスーの行動には、最初から最後までイライラさせられた。しかも、自分では悪気がないところがさらにタチが悪い。アラベラのようにわかりやすい悪人の方が、かえって親しみが持ててしまうくらいだ。ジュードにとって最も不幸だったのは、女子を見る目がまったくなかったということだろう。



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