MARGARET PETERSON HADDIX 




 子供向けのファンタジー作品で有名なアメリカの女性作家。
1963年にオハイオ州の農村で生まれた作者は、オハイオ州のマイアミ大学でジャーナリズムを学び、卒業後は新聞社の編集者や記者、フリーライターなどの職業に就く。1995年にデビュー作となる「Running Out of Time」を発表し、それ以降はシリーズ物を含む数多くの作品を発表している。
 子供向けに書かれているため、当然ながら文章は読みやすい。しかし、子供向けとは思えない巧みなストーリー展開で、大人が読んでも引き込まれることは間違いない。年齢・性別・英語力に関係なく、すべての人にお勧めしたい作家。




TURNABOUT  14/10/19更新

 読み易さ 
 面白さ   

2001年に100歳を迎えたアメリアは、若返りを研究している機関によって若返りの薬を注射される。アメリアを含めて50人の老人たちが同じ治療を受け、それぞれが若返っていくが、年が若くなるにつれてその分の記憶を失っていくという欠陥が見つかる。さらに、若返りの進行を止めるための薬が効かないという欠陥も見つかり、アメリアたちはなすすべもなく若返っていく。友人のアニー・ベスとともに研究機関を飛び出して外の世界での生活を送るアメリアだったが、2085年には15歳まで若返り、このまま幼児になってしまうことに危機感を抱く。

 いまにも死にそうな老人が年々若返っていくという設定は面白いけれど、実際にはどう考えてもあり得ない設定なので、説得力に欠ける。たしかに、永遠に若さを保つことができるのは素晴らしいことだとは思うが、それは周囲の人間も同じように年を取らないという条件であっての話だ。周囲の人間はどんどんと年を取っていくのに、自分だけずっと若いままなんて、さらには自分だけ若返っていくなんて、想像するだに恐ろしい。他人よりも3割くらい遅いスピードで年を取っていく、という程度の薬であれば、注射してもいいかなと考えるかもしれないが、若返りの薬なんてまっぴらだ。おそらく、ほとんどの人が同じように考えるのではないかと思う。だから、若返りを研究する機関なんてどうにも嘘くさくて、ストーリーに入っていくことができなかった。



DOUBLE IDENTITY  14/09/28更新

 読み易さ 
 面白さ   

12歳の少女ベサニーは両親とともに幸せに暮らしていたが、ある日のこと、それまでに一度も会ったことがない伯母のマリーの家に預けられることになる。両親は何も事情を話さず、自分から両親に連絡を取ることもできない。しかし、自分にはエリザベスという名前の姉がいたことを知ったベサニーは、エリザベスは自分が生まれる数年前に交通事故に遭って13歳で亡くなったこと、エリザベスは自分とそっくりだったことをマリーから聞かされる。やがて、ベサニーをつけまわす正体不明の男が現れ、謎はさらに深まってゆく。

 いきなり両親から見捨てられるという導入部から、謎が謎を呼ぶ中盤までは非常に面白いけれど、ラストがイマイチ盛り上がらない。というか、なぜ両親がここまでして逃げ回る必要があるのか、そのあたりの説得力が弱いと感じた。ベサニーも怯えて家に閉じこもっているだけで、大した冒険があるわけでもない。こういう子供向けの作品というのは、主人公の子供が危険や困難に立ち向かっていく過程で人間として成長していくという展開がお約束になっているけれど、そういったお約束があまり見られないのが残念だった。



AMONG THE FREE  14/09/21更新

 読み易さ 
 面白さ   

人口警察の本部に潜入したルークは、人口警察の命令に従おうとしない女性を銃殺するように上官から命令されるが、その命令に背いてその場から逃げだしてしまう。あてもなくさまようルークは、ある荒れ果てた村にたどり着き、テレビから流れるニュースで人口警察が政権の座を追われたことを知る。人口警察の本部に戻ったルークは、これまでの圧制から解放されたことを喜びあう大勢の住民を目にする。しかし、代わりに政権の座に就いたのが、以前に面識のあるオスカーであることを知り、ルークは胸騒ぎを覚える。その予感は的中し、オスカーはシャドーチルドレンをスケープゴートにして政権の基盤強化を図ろうとしていた。

 シリーズの最終巻ということで、今回は当然ながらルークが主人公になっている。正直なところ、あまり面白くない。これは3巻あたりから感じていたことなのだが、とにかく設定がしょぼすぎるのがつまらなく感じる原因だと思う。作中の国がどれくらいの規模なのかはわからないが、住民が蜂起したくらいで一国の政権が崩壊するなんてありえない。別に核兵器を持っている必要はないが、住民を簡単に鎮圧できるくらいの装備は持ってるのが当然だろう。子供向けのお話なので、このあたりのスケール感はしかたないのかもしれないが、12〜13歳の子供たちが崩壊に追い込める政権というのも、あまりにもしょぼい。
 このシリーズは、最初の1巻と2巻は抜群に面白かったが、ルークが主役を降りる3巻あたりから次第につまらなくなった。子供たちが独裁政権を倒すという構想は面白いけれど、やっぱり無理がある設定だと思う。



AMONG THE ENEMY  14/09/21更新

 読み易さ 
 面白さ   

ニナとともに人口警察の刑務所から逃れたマシアス、パーシー、アリアの三人は、クーデターを起こした人口警察によって収容所に連行される。三人は収容所に到着する寸前に逃げ出してルークたちがいる学校を目指すが、その途中でパーシーとアリアが重傷を負い、マシアスは二人を残し、助けを求めるために学校を訪れる。マシアスはタルボット夫人を伴い、二人を残してきた小屋に戻るが、そこに二人の姿はなかった。その現場でひょんなことから人口警察の警官の命を助けたマシアスは、そのまま人口警察に入隊する。人口警察の本部でニナと再会したマシアスは、ニナと協力して人口警察の企みを阻止すべく奮闘する。

 今回は、第3巻の「Among the Betrayed」でニナと行動を共にしたマシアスが主人公になっている。このシリーズの本来の主人公はルークだが、そのルークが主役として活躍するのは、これまでのところ1巻と2巻と4巻だけで、それ以外の巻ではサブキャラクターが主役を務めている。実は、サブキャラクターが主人公の巻ではアクションが派手で、この第6巻も例外ではない。物語の舞台が人口警察の本部ということで、マシアスもかなり危険な行動を取っている。それに比べて本来の主人公であるルークは、いずれの巻でも大した活躍はしていなくて、これではだれが本当の主役なのかよくわからない。最終巻でルークが思い切り活躍してくれることを期待しよう。



AMONG THE BRAVES  14/09/21更新

 読み易さ 
 面白さ   

ルークたちはグラント家から脱出してジェンの父親であるタルボット氏に助けを求めるが、タルボット氏は人口警察に逮捕され、ルークたちも人口警察によって連行されてしまう。クーデターによって人口警察が政権を握り、社会は混乱に陥る。一人だけ残されたトレイ少年は、ルークの兄であるマークとともにルークたちを救出するため人口警察の本部に向かうが、マークが人口警察に逮捕されてしまう。トレイは人口警察に入隊して本部に潜入し、マークが捕えられている地下室に忍び込むが、頑丈な檻に入れられたマークを助けることができない。絶望する二人だったが、人口警察の内部に味方を見つけ、なんとか脱出しようと試みる。

 これまで気の弱い脇役として登場していたトレイ少年が、今回の主役になっている。気が弱いわりにはものすごい活躍ぶりで、これまでのシリーズにおいて最も派手なアクションが展開されている。正直なところ、ここまで都合よくはいかないだろうと思ってしまうが、子供向けのお話ということで、こういう展開もありかもしれない。アクションだけでなく、ストーリー的にも大きく展開していて、いよいよラストに向かって盛り上がってきた感じだ。



AMONG THE BARONS  14/09/21更新

 読み易さ 
 面白さ   

新しくできた友人たちとともに学校生活を楽しむルークのもとに、ルークの偽名「リー・グラント」の弟であるスミッツが転校してくる。スミッツにはオスカーという屈強なボディガードが四六時中ついているため、ルークはスミッツが転校してきた本当の目的を知ることができずにいた。そんなある日のこと、スミッツの両親から自宅に帰ってくるように命じられたルークとスミッツは、偽りの兄弟を演じながらグラント家に戻る。そこでルークは、グラント夫妻がルークの死を偽装して、周囲の人間にリー・グラントが死んだと思いこませようと計画していることを知る。そんなことになったら、せっかく手に入れた自由が奪われ、また隠れて生活しなければならないと思い悩むルークだったが、オスカーから思いがけない話を聞かされる。それは、オスカーが反政府組織のメンバーであり、リー・グラントはオスカーに協力したために政府によって殺害されたという話だった。

 今回はかなり話が複雑になってきて、政府、反政府組織、「バロン」と呼ばれる特権階級、シャドーチルドレン、シャドーチルドレンを支援する大人などが物語に絡んでくる。全7巻のシリーズということで、そろそろラストに向かって本格的に物語が動き始めたという感じだ。しかし、いくら変装したからといって、まったくの赤の他人であるルークがリーを演じるという展開には無理がある。子供向けの作品だからそのあたりはご愛敬なのかもしれないが、その他のディテールはかなり綿密に設定されているため、こういう無理やりな展開は作品のキズになると思う。



AMONG THE HIDDEN  14/09/21更新

 読み易さ 
 面白さ   

13歳の少女ニナは、人口警察のスパイとして学校に潜入していたジェーソンの共犯者という容疑で人口警察に逮捕されてしまう。逮捕の理由は、人口警察に対する裏切り行為だった。まったく身に覚えのないニナは、警察の取り調べに対して自分の潔白を主張するが、恋人であると信じていたジェーソンに騙されて利用されていたことを知り、絶望する。人口警察はそんなニナに対して、同じ刑務所に収容されている3人の子供の身元判明につながる情報を聞き出せば、処刑せずに助けてやるという交換条件を提案する。まだ幼い3人を信用させて情報を聞き出そうとするニナだったが、自分と同じシャドーチルドレンである3人を裏切ることはできず、千載一遇のチャンスを見つけて全員で脱獄することを決意する。

 今回の主役はルークではなく、前作でチョイ役として出てきたニナが主役になっている。とにかく刑務所での待遇が過酷すぎて、フィクションであることをわかっていながら、子供に対してこの扱いはないだろうと憤慨してしまった。最後にはどんでん返しが待っていて、ちゃんとハッピーエンドで終わるわけだけれど、それにしてもここまで過酷な扱いをする必要があるのか疑問だ。ストーリーとしてはそこそこ面白いけれど、なんだか後味が悪い。



AMONG THE IMPOSTERS  14/08/31更新

 読み易さ 
 面白さ    お勧め

ジェンの父親の助けにより、偽の身分証明書を取得して全寮制の学校に入ることになったルークは、リー・グラントという名前で新しい生活を始める。しかし、同じ部屋のジェーソンという上級生から毎日執拗ないじめを受け、一人の友達もできないルークは、授業をさぼって学校の裏手にある森で過ごすようになる。ある日の夜、森に出かけたルークは、何人かの男女のグループが森の中で話し合っている現場に遭遇する。会話の内容から、彼らは自分と同じシャドー・チルドレンであることがわかり、ルークもそのグループの一員として迎えられる。そのグループのリーダーは、同じ部屋のジェーソンだった。

 最初は自分の名前を言うときでさえおどおどしていたルークが、いろいろな試練を経て次第にたくましくなっていく姿が頼もしい。このシリーズでは、人口警察の職員であるジェンの父親が周囲をだましてルークを助けたり、シャドーチルドレンを名乗るジェーソンが人口警察のスパイとして仲間をだましたりと、さながらだましあい合戦の様相を呈している。だれが味方でだれが敵なのか、読む方としてもわからないため、ハラハラしながらページをめくることになる。



AMONG THE HIDDEN  14/08/31更新

 読み易さ 
 面白さ    お勧め

物語の舞台は、人口が増えて食糧不足に陥った架空の国。政府は人口の増加を抑制するために、各家庭につき持てる子供は2人までという制限を設ける。しかし、この法律を破って3人目の子供を作る家庭もあり、そうした子供たちは「シャドーチルドレン」と呼ばれ、社会の目から隠れながら生活していた。12歳のルーク少年もそんな「シャドーチルドレン」の一人で、家の中で息をひそめて暮らしていた。しかし、隣に引っ越してきた家にも、自分と同じ境遇の子供がいることに気付いたルークは、勇気を振り絞ってその子の家を訪ねる。そこにいたのはジェンという少女で、二人は周囲の目を盗んで会うようになる。勝気なジェンは、パソコンのチャットを利用して他のシャドーチルドレンに呼びかけ、大統領に自分たちの存在を認めさせるために大挙して直訴することを計画していた。ルークはあまりにも危険な計画だと言って必死にジェンを止めようとするが、ついにジェンは行動を起こしてしまう。

 子供向けのSFだと思って油断していたら、ものすごく面白くて、いい意味で裏切られた。「人口警察」にその存在がバレてしまったら処刑されてしまうため、一生日陰者として生きていかなければならないシャドーチルドレンの悲しさというのがストーリーの根底にあり、その状況をどう打開していくのかが読みどころになるのだろう。このシリーズは全7巻で構成されているが、最初の1巻を読んだだけで、早くも引き込まれてしまった。久しぶりに胸躍るような読書ができそうな予感がしている。



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