E.M. FORSTER 




 繊細な作風で知られるイギリスの作家。
 1879年にロンドンに生まれた作者は、幼い頃に父親を亡くし、母親と叔母たちによって育てられた。キングス・カレッジを卒業後にエッセイや短編小説を書き始め、1905年に出版された "Where Angels Fear to Tread" で作家デビューを果たす。その後もエッセイや評論を中心に多くの作品を残し、1970年に亡くなる。作者の代表作であり映画化もされた "Maurice" は、作者の死後1971年に発表された。同性愛というテーマのため、作者自身が生前の出版を拒んだらしい。
 作品に共通するテーマとして、社会的な階級や立場の異なる人間同士の関係を描いたものが多い。長編小説に関しては20世紀初頭に発表された作品が中心であるため、文章は読みやすいとは言えない。読む力がある程度ないと、ストレスだけが溜まりそう。




A PASSAGE TO INDIA   11/01/22 更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は、イギリスが植民地支配をする第一次大戦後のインド。インドの地で判事を務めるロニーの元に、母親のムーア夫人と婚約者のアデラが訪ねて来る。インド人を見下して差別的にふるまうイギリス人社会を不愉快に感じた二人は、インド人に理解を示すイギリス人教授のフィールディングの紹介で、インド人医師のアジズと知り合う。アジズはムーア夫人とアデラをもてなすため、観光名所の洞窟へとピクニックに出かけるが、途中でアデラとはぐれてしまう。そして、洞窟の中でアジズに襲われそうになったとアデラが訴えたため、アジズは逮捕されてしまう。友人の無実を信じるフィールディングは必死にアジズを擁護するが、イギリス人とインド人との対立は次第に激しくなっていく。

 フォースター氏の作品としては、珍しくはっきりとしたストーリーのある作品だと思う。途中まではいつものようにダラダラと進んでいくのだが、半分を過ぎたあたりで一気にストーリーが動き出す。人種の違いや、支配する側とされる側という壁を乗り越えて人間は理解しあうことができるのか、というのが大きなテーマになっているが、現実問題としては難しいだろう。この作品では、傲慢なイギリス人と善人のフィールディングとの対比がよく描けている。
 しかし、洞窟の中で何があったのかについては、結局最後まで読者に明かされないまま終わってしまうのだが、これはどうかと思う。このあたりをはっきり書かないと、その後のアデラの言動や心情もよく理解できないままになってしまう。また、洞窟に入る前に、自分が婚約者を愛していないことにアデラが気付く場面があるのだが、これもあまりにも唐突で何の説明もないため、その変心の理由がわからない。
 このように、いくつか理解不能な部分もあるけれど、フォースター氏の作品としては比較的読みやすいので、それなりに楽しめると思う。



HOWARDS END   07/11/10 更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は20世紀初頭のイギリス。思慮深い姉のマーガレットと社交的な妹ヘレンが住む家の向いに、資産家のウィルコックス一家が引っ越してくる。マーガレットはウィルコックス家のルース夫人と仲良くなるが、ルース夫人はやがて病死してしまう。妻に先立たれたヘンリーはマーガレットに求婚し、マーガレットもこれを受け入れる。しかし、自分の友人である貧しいレナード青年がヘンリーの助言によって職を失ってしまったことに腹を立てたヘレンは、マーガレットの前から姿を消してしまう。ヘレンを心配するマーガレットは、別荘であるハワーズ・エンドでようやくヘレンと再会するが、ヘレンのお腹には新しい命が宿っていた。

 フォースター氏お得意の、社会的身分の違う人間同士の関係を描いた作品ということになるのだろうが、最初から最後まで退屈だった。それがどうしたの? と言いたくなるような展開で、何を伝えたいのかがさっぱりわからない。
 その分キャラクターが素敵かと言えば、金持ちのヘンリーはちょっとだけ嫌なヤツで、貧乏青年のレナードはちょっとだけ卑屈で、姉のマーガレットはちょっとだけ優等生で、妹のヘレンはちょっとだけわがままで、といった感じで、どのキャラクターも中途半端。とにかく淡々と物語が進んでいくだけなので、ドラマを期待して読むと思い切り期待はずれになりそう。



A ROOM WITH A VIEW   06/12/17 更新

 読み易さ 
 面白さ   

従姉のシャーロットと一緒にイタリアを訪れたルーシーは、ホテルの部屋からの眺めが良くないことに失望する。それを聞いていたエマーソン親子が部屋の交換を申し出たことから、ルーシーは息子のジョージと知り合う。しかしシャーロットは、労働者階級のエマーソン親子を快く思っていないため、二人を避けようとする。そんなある日、皆とハイキングに出かけたルーシーは、森の中でジョージにキスをされてしまう。それを偶然目撃したシャーロットは、ルーシーを連れてロンドンに戻ってしまう。実家に戻ったルーシーは、すぐにセシルという男性と婚約をするが、近所の貸家にエマーソン親子が引っ越してきたことを知って動揺する。セシルとの交際に満たされない想いを抱くルーシーは、自分でも気付かないうちにジョージに惹かれていく。

 ルーシーはジョージの父親に説得されて自分の気持ちに気付くわけだが、それはどうかと思った。相手を想う気持ちって、他人に言われて初めて気付くようなものですか。自分の一生がかかっている決断なのに、他人に言われないと気付かないという時点でどうかしていると感じるのは自分だけですか。ルーシーがあまりにも鈍感なので、読んでいて嫌になった。
 おせっかいなシャーロットのキャラクターだけは面白かったけど、もっとデフォルメして嫌な人間として描いたほうが面白くなったと思う。登場人物すべてのキャラクター設定がイマイチ中途半端で、面白くなかった。よく言えばお上品、悪く言えば退屈な作品。



MAURICE   06/12/02 更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

物語の舞台は20世紀初頭のイギリス。主人公のモーリスは上流階級に生まれ育ち、ケンブリッジ大学に通う。大学の1年先輩のクライブと仲良くなったモーリスは、ある日突然クライブから愛の告白をされる。戸惑いながらも、自分は同性しか愛せないことに気付いたモーリスは、クライブの気持ちを受け入れる。幸せな日々を送るモーリスだったが、クライブからまたも突然に別れを告げられる。男性に興味がなくなったクライブは、それから間もなく女性と結婚してしまい、モーリスは失意の底に落ちる。そんなモーリスの目の前に現れたのは、クライブの家で使用人として働くアレックだった。まったく身分の違う二人は、偏見に満ちたイギリス社会で愛を貫くことができるのか。

 文章は難しかったけど、面白かった。当時のイギリスでは同性愛は犯罪だったらしく、今よりもっと偏見の目で見られたのだろう。藁にもすがる思いでモーリスが精神科医や催眠術師を訪ねるところは、なんとも哀れで胸が詰まった。どうやら作者自身も同性愛者だったらしく、そうした作者の思いも反映されているのだろう。
 しかし、どうしても納得できないのは、あまりにもクライブの変心が突然なこと。いくらなんでも、同性愛者がある日突然異性愛者になれるとは思えない。同性愛者の心理はわかりすぎるほどわかっているはずなのに、フォースター氏がどうしてこういう展開にしたのかが疑問。残念ながら、この展開がこの作品の傷になっていると思う。でも、全体的なトーンとしては甘く切ないので、女性には受ける作品だと思う。



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