KEN FOLLETT 



 スパイ小説で有名なイギリスの作家。
 1949年にウエールズで生まれた作者は、大学卒業後新聞記者を経てロンドンの出版社に勤務し、1978年に出版された「針の眼」がベストセラーを記録したのを機に出版社を退職して専業作家となる。ケン・フォレットの名前で書かれた最初のヒット作が「針の眼」だが、それ以前にも在職中に様々なペンネームで作品を出版していたとのこと。公式には1973年に発表された "The Big Needle" が作者の処女作ということになっているらしい。
 ベストセラー作家だけあって、スパイ小説というジャンルの割には比較的読みやすい。スピーディでスリリングな展開を得意とする作者の作品は、冒頭から一気に引き込まれる。構成の妙を楽しみながら読むことができる。




THE MAN FROM ST. PETERSBURG  03/07/24 更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は、1914年のイギリス。ヨーロッパにおけるドイツの勢力拡大を警戒するイギリスは、ドイツを牽制するべくロシアと軍事同盟を結ぼうと画策する。ロシア皇帝の息子であるアレックス王子との交渉役に任命されたのは、ロシア皇帝の親族にあたるイギリス貴族のワルデン。その情報をキャッチしたロシアのアナーキストのフェリックスは、ロシアの参戦を阻止するべく、アレックス王子の暗殺を計画する。暗殺を阻止するべくフェリックスと対決するワルデン。しかし、ワルデンの妻リディアには、フェリックスの元恋人という過去があった。リディアの娘シャーロットをも巻き込んで、一大バトルが展開される。

 こういうスパイ小説のあらすじを書くときには、いつも苦労する。なるべく簡潔にわかりやすく書こうと心がけてはいるが、わずか5〜6行の短い文章の中に何人もの人名が出てくると、読む人は混乱してしまうだろうと思う。この文章を読んでくれている貴方に謝りたい。読みにくい文章で申し訳ない。
 それはともかく、肝心のストーリーについては、最初はちょっと退屈に感じるが、その分ラストは読ませる。ちょっとばかり綺麗すぎるラストのような気もするが、これ以外にまとめようがないというくらいによくできたラストだと思う。それにしても、この時代のイギリス貴族の生活はなんとも優雅でうらやましい。貴族の家庭に生まれるだけで何不自由のない生活を送れるとは、アナーキストでなくとも不公平だと感じるのは当然かもしれない。



CODE TO ZERO  03/06/27 更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は、1958年のアメリカ。人類史上初となる人工衛星打ち上げの快挙をソ連に先を越されたアメリカは、国の威信をかけて衛星の打ち上げに全力を挙げていた。打ち上げを翌日に控えた早朝、公衆トイレで目覚めた主人公のルークは、一切の記憶をなくしていた。自分が何者なのか、なぜ記憶をなくしてしまったのかを探るルークは、やがて自分が人工衛星打ち上げに関わっている科学者だということを知る。やがて、 CIA に勤める親友のアンソニーが自分の記憶を消してしまったことを知ったルークは、昔の恋人であるビリーとともに真相解明に乗り出す。なぜ親友のアンソニーがルークの命を狙うのか? 衛星の打ち上げに関係があるのか? 刻一刻と近づく打ち上げの瞬間に向けて、息詰まる攻防が展開される。

 ストーリーの構成が最高にうまい。特に冒頭のシーンが素晴らしい。
 眼を覚ますと公衆トイレの床の上で、これまでの記憶は一切ない。記憶を取り戻すために行動を起こすルークを、次々に危機が襲う。徐々に明らかにされる過去。現在と過去を交差しながら進むストーリーで、最初からぐいぐいと引き込まれた。大学時代の友情と恋愛を巧みにからめながら進んでいくため、各キャラクターの書き込みも充分で、作品にさらに深みを与えている。ストーリー展開だけでなく、こうした人物の書き込みというのも、小説にとっては非常に大事な要素だと思う。



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