お勧め作品 




 このページでは、自分がこれまでに読んだ作品の中から、面白さの評価で をつけた作品のみを集めてみました。自分はよほど面白くない限り はつけないので、このページで紹介している作品はどれもお勧めです。決して読んで後悔することはないと思います。
 とはいえ、個人の主観によって面白さの評価は大きく異なるので、「読んでみたけど、全然面白くなかったぞ。どうしてくれるんだ! ぷんぷん」という苦情は一切受け付けません。あしからず。




NORWEGIAN WOOD  by Haruki Murakami 15/09/13更新

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東京の大学に通う19歳のワタナベトオルは、ある日偶然に高校時代の同級生であるナオコと再会する。ナオコは、トオルの親友であるキズキの彼女で、高校生のころはいつも3人で遊んでいたが、キズキが突然自殺してからは会うことがなくなっていた。偶然の出会いをきっかけに交際を始め、ナオコの20歳の誕生日に一夜を共にするが、それを最後にナオコはトオルの前から姿を消し、京都にある療養所に入院してしまう。その後、同じ大学のミドリと知り合い、友人として付き合うようになる。京都の療養所を訪ねたトオルは、ナオコと同室のレイコと知り合い、3人でさまざまな話をする。ナオコの回復を願いながら東京に戻ったトオルに、レイコから悲しい知らせが届く。

 おそらく、村上春樹作品の中でこれが最も有名な作品だろう。どうせスカしたことばかり書いてある雰囲気だけの小説なんだろうと思って読んだところ、意外にも面白かった。もちろん、スカした感じで現実感に乏しい部分もあるけれど、なぜか作品の持つ独特な雰囲気に引き込まれてしまった。主人公が通う大学が早稲田大学をモデルにしているということもあってか、学生時代のなつかしさも感じることができた。物語の舞台が1970年の東京ということもあって、通信手段として手紙が使われているのもいい。彼女からの手紙を心待ちにするという時代が、いまからわずか30年前まではあったということだ。主人公のトオルに自分を重ね合わせて共感するということはまったくないけれど、ちょっとした憧れを抱いてしまう感じはある。なんだかんだ言いながら、やっぱりカッコいいのだ。主人公をとおして、ちょっとカッコいい自分を夢見ていたいのかもしれない。
 それにしても、ナオコもミドリも面倒くさいタイプの女子で、現実的にはどちらともお付き合いはしたくない。



AMONG THE IMPOSTERS  by Magaret Peterson Haddix  14/08/31更新

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ジェンの父親の助けにより、偽の身分証明書を取得して全寮制の学校に入ることになったルークは、リー・グラントという名前で新しい生活を始める。しかし、同じ部屋のジェーソンという上級生から毎日執拗ないじめを受け、一人の友達もできないルークは、授業をさぼって学校の裏手にある森で過ごすようになる。ある日の夜、森に出かけたルークは、何人かの男女のグループが森の中で話し合っている現場に遭遇する。会話の内容から、彼らは自分と同じシャドー・チルドレンであることがわかり、ルークもそのグループの一員として迎えられる。そのグループのリーダーは、同じ部屋のジェーソンだった。

  最初は自分の名前を言うときでさえおどおどしていたルークが、いろいろな試練を経て次第にたくましくなっていく姿が頼もしい。このシリーズでは、人口警察の職員であるジェンの父親が周囲をだましてルークを助けたり、シャドーチルドレンを名乗るジェーソンが人口警察のスパイとして仲間をだましたりと、さながらだましあい合戦の様相を呈している。だれが味方でだれが敵なのか、読む方としてもわからないため、ハラハラしながらページをめくることになる。



AMONG THE HIDDEN  by Magaret Peterson Haddix  14/08/31更新

 読み易さ 
 面白さ    お勧め

物語の舞台は、人口が増えて食糧不足に陥った架空の国。政府は人口の増加を抑制するために、各家庭につき持てる子供は2人までという制限を設ける。しかし、この法律を破って3人目の子供を作る家庭もあり、そうした子供たちは「シャドーチルドレン」と呼ばれ、社会の目から隠れながら生活していた。12歳のルーク少年もそんな「シャドーチルドレン」の一人で、家の中で息をひそめて暮らしていた。しかし、隣に引っ越してきた家にも、自分と同じ境遇の子供がいることに気付いたルークは、勇気を振り絞ってその子の家を訪ねる。そこにいたのはジェンという少女で、二人は周囲の目を盗んで会うようになる。勝気なジェンは、パソコンのチャットを利用して他のシャドーチルドレンに呼びかけ、大統領に自分たちの存在を認めさせるために大挙して直訴することを計画していた。ルークはあまりにも危険な計画だと言って必死にジェンを止めようとするが、ついにジェンは行動を起こしてしまう。

 子供向けのSFだと思って油断していたら、ものすごく面白くて、いい意味で裏切られた。「人口警察」にその存在がバレてしまったら処刑されてしまうため、一生日陰者として生きていかなければならないシャドーチルドレンの悲しさというのがストーリーの根底にあり、その状況をどう打開していくのかが読みどころになるのだろう。このシリーズは全7巻で構成されているが、最初の1巻を読んだだけで、早くも引き込まれてしまった。久しぶりに胸躍るような読書ができそうな予感がしている。



ORACLE NIGHT  by Paul Auster  13/03/10 更新

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物語の主人公は、34歳の作家のシドニー。重病を患って生死の境をさまうが、なんとか回復して退院する。そんなある日のこと、街で見かけた文房具屋に立ち寄り、青いノートに一目ぼれして買ってしまう。ノートを開くと、創作意欲が湧き起こり、夢中で小説のプロットを書いていく。そうして順調に回復していくシドニーだったが、妻のグレースの様子がおかしいことに気付く。情緒不安定になって突然泣き出したり、何の連絡もなく外泊したりで、何か秘密を抱えているのではないかと疑いを抱く。やがてその疑いは、家族同然の付き合いをしているジョンへと向けられていく。

 激しく面白かった。オースター氏の作品としてはかなりわかりやすい内容で、突飛な設定が出てきて戸惑うといったことはない。
 主人公のシドニーが青いノートに小説のプロットを書く場面があり、これが作中作となっているのだが、この作中作が非常に面白い。ある男が夜中にちょっとしたお使いに出かけるのだが、あることがきっかけとなり、それまでの人生をすべて捨てて、知らない街で新しい人生を始める。この男が、一目ぼれした女性に電話をかけ、留守電に告白のメッセージを残すシーンが出てくるのだが、これがすごくいい。自分でもどうにもできない感情を、留守電に向って吐き出していくという行為に、素直に感動してしまった。ただ、この作中作は途中で挫折してしまうのが残念だ。できれば最後まで読みたかった。
 また、シドニーが妻のグレースに向ける愛情もいい。グレースのことを疑いながらも、すべて自分の中に抱え込んだまま、グレースを許すことを選択するシドニーがいい。人を深く愛するほど、自分も深く傷つくことがあるわけで、ものすごく月並みな感想だけれど、人が人を好きになる感情ほどやっかいなものはないと思う。まあ、そうした感情こそが、人生に花を添えるのだろうけれど。(もっと詳しい感想はこちら



NEVER LET ME GO  by Kazuo Ishiguro   10/10/30 更新

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「介護師」として働く31歳のキャシーが、これまでの人生を回想しながら物語が進む。キャシーは、イギリスののどかな地方の私立学校で学んでいたが、そこは外界からは隔絶された世界だった。親友のルースは気の強い少女だが、二人でいるときには何でも話せる間柄だった。周りからなにかとからかわれている少年のトミーも、なぜかキャシーにとっては気になる存在で、いろいろな話をするようになる。やがて思春期を迎える頃になってルースとトミーが交際を始め、それまでの3人の関係が微妙に変化していく。そんな3人には、「ドナー」として臓器を提供するという、クローン人間としての過酷な運命が待っていた。

 激しく面白かった。クローン人間として生まれた子供たちをメインにストーリーが展開していくのだが、特にSFやミステリー、あるいはホラー作品ということではない。キャシーの回想を軸にして物語が展開され、ごくありふれた出来事が淡々と語られていくだけなのだが、懐かしくてどことなく切ない感じが妙に心に響く作品だった。
 イシグロ氏の作品はこれまでに何冊か読んだだけだが、正直なところ雰囲気だけの作家だと思っていた。しかし、この作品に関する限りは、その雰囲気も含めて非常に素晴らしい出来だと思う。何気ない会話や仕草から、相手の気持ちを推測するシーンが随所に出てくるのだが、このあたりの描写が実に細やかでリアリティがあって、どんどんストーリーに引き込まれていった。早く先が読みたいと思いながらも、残りのページ数が少なくなってくるのが寂しいという、なんとも悩ましい気持ちになった。クローン人間の是非や倫理観などといった難しいことは考えなくても、この悲しくも美しい世界を読むだけで、読書の快楽を十分に堪能できる作品だと思う。



OF HUMAN BONDAGE  by Somerset Maugham  10/04/10 更新

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幼い頃に両親を亡くしたフィリップは、牧師の伯父夫婦に引き取られて育つ。生まれつき足に障害を持つフィリップは、神学校で級友たちの嘲笑の的となり、やがて信仰心を失っていく。神学校を卒業したフィリップは、伯父の勧めに逆らってドイツに留学し、帰国後は会計事務所に見習いとして就職するが、仕事にまったく興味を持つことができない。会計事務所を1年間で辞めたフィリップはパリで絵の修行を始めるが、自分には絵の才能がないことに気付き、ロンドンに戻って医学の道を志す。そんなフィリップの前に現れたのは、行きつけのカフェでウェイトレスとして働くミルドレッドだった。ミルドレッドの素っ気ない態度に最初こそ反感を抱いていたフィリップだったが、やがて自分でもどうしようもないくらいにミルドレッドに惹かれていく。

  モームの自伝的小説として有名な作品だが、激しく面白かった。自分の足にコンプレックスを抱く内気なフィリップの気持ちは、同じく小心者の自分とだぶるところがあって、共感できる部分が多くあった。そして、フィリップがたどり着いた「人生には意味なんてない」という結論にも、ものすごく共感できる。
 しかしなんと言っても、この作品の一番の読みどころは、どうしようもないくらいに性悪な女子として描かれるミルドレッドと、卑屈なまでにミルドレッドに尽くすフィリップとの関係だろう。いいように利用され、手ひどい裏切りにあいながらも、まるで奴隷のようにミルドレッドに尽くすフィリップの気持ちは、ほんの少しだけわかるような気がする。そして、自分でも理由がわからず突然気持ちが冷めてしまうというのも、ちょっとだけ理解できる。結局のところ、フィリップは「いい人」なのだ。嫌いな相手に対しても、相手の気持ちを考えてどうしても冷たくしきれないところや、困っている人を見捨てておけず、つい面倒を抱え込んでしまうところなど、フィリップの不器用な優しさが見えてきて心が暖かくなる。機会があればぜひご一読を。(もっと詳しい感想はこちら



THE MUSIC OF CHANCE  by Paul Auster  09/03/28 更新

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主人公のナッシュが、思いがけず20万ドルの遺産を手にするところから物語は始まる。新車のサーブを購入し、それまで勤めていた消防署を辞めたナッシュは、あてもなくアメリカ中をドライブして暮らす。最初は気ままに自由を謳歌していたナッシュだが、手元の現金が減ってくるにつれて不安も大きくなってくる。そんなときに出会ったのは、ポッツィというギャンブラーの若い男。ポーカーには絶対の自信を持つポッツィは、宝くじに当たった成金の二人とこれからポーカー勝負をするのだが、肝心の軍資金がないという。それを聞いたナッシュは、残りの1万ドルをすべてポッツィに託してその勝負に乗ることを決意する。しかし、最後の大勝負に敗れた二人は借金を作ってしまい、労働によって借金を返すことを約束させられてしまう。毎日重い石を積んで巨大な壁を作る二人の先に待つものは、希望かそれとも絶望か。

 激しく面白かった。最初から引き込まれて、ラストまでまさにノンストップで読んでしまった。
 特に派手なアクションや大きな事件が発生するわけではなく、あくまでも淡々と物語が進んでいくのだが、その静かなタッチがなんとも言えない雰囲気を出している。具体的にどこがどう面白かったかを説明するのは難しいのだが、あるときは悲しかったり、あるときは怒りを覚えたり、あるときは怖かったりと、いろいろな感情を刺激される作品だ。怖さという点では、安部公房の「砂の女」と似ている部分があるように思う。読んでいて、ふと現実感から遠く離れてしまいそうになりながら、作中のキャラクターに強く感情移入するといった、そんな独特の雰囲気を持つ作品だ。登場するキャラクターもいい。すべてのキャラクターが具体的な映像になって浮かんでくるほど、キャラクターが生きている。
 うまく説明できないのがもどかしいが、とにかく面白い。もちろん好みの問題はあるだろうが、ハマる人は強烈にハマる作品だと思う。機会があれば、ぜひご一読を。



THE RUINS  by Scott Smith  08/11/08 更新

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大学を卒業したばかりの2組のアメリカ人カップルが、卒業旅行として真夏のメキシコに出かけるところから物語は始まる。4人は旅先でドイツ人観光客のマティアスと知り合うが、マティアスの弟ヘンリックが数日前から行方不明になっていることを知る。マティアスの話によると、ヘンリックはジャングルの奥地にある廃墟の発掘調査に向かったらしい。4人はマティアスとともにヘンリックを探しに出かけようとするが、同じく旅先で知り合ったギリシャ人のパブロも一緒に廃墟へ向かうことになる。最初は軽いピクニック気分で出かけた6人だったが、たどり着いた廃墟には、恐ろしい罠が待ち受けていた。

 久しぶりに面白いと思える作品だった。とにかく、こういうサバイバル物というのは自分の大好物で、冬山や大海原での遭難をテーマにしたものならば、フィクション、ノンフィクションを問わずに激しく自分のツボなのだ。
 サバイバル物というだけならどこにでもあるが、この作品の素晴らしいところは、登場人物が少なくて話がわかりやすく、各キャラクターの特徴も極めてわかりやすく描き分けられているところ。冷静沈着なジェフ、心配性なエイミー、お調子者のエリック、軽率なステイシー、寡黙なマティアス、楽天家のパブロというキャラクターの配置は、こういうサバイバル作品においては絶妙な選択だと思う。こういうわかりやすい登場人物たちの心理を深く描き出しながら物語が進むので、ホラーというよりは極限状態における人間ドラマとしても読むことができる。
 ストーリーとしてはほとんどあってないようなものなので、ハラハラドキドキのジェットコースター的な展開が好きな人が読むとがっかりするかもしれないが、各キャラクターの心理をじっくりと味わいながら読みたいという人には激しくお薦めの一冊。



NINETEEN EIGHTY-FOUR  by George Orwell  07/06/09更新

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1984年の世界は、イギリスとアメリカを中心とするオセアニア、ロシアとヨーロッパを中心とするユーラシア、日本と中国を中心とするイースタシアの3つの世界に分かれていた。オセアニア政府に勤務するウィンストンは、常に監視カメラが回っている徹底的な管理社会に対して疑問を持っていた。女性職員のジュリアと知り合ったウィンストンは、監視の目を逃れてジュリアとの密会を重ねる。政府に対して疑問を抱く二人は、信頼できる人物と信じる政府高官のオブライエンに会いに行く。二人を迎えたオブライエンは、自分が反政府組織のメンバーであることを明かし、二人にも協力を要請する。思想犯として逮捕されれば処刑されることを覚悟で、ウィンストンとジュリアは反政府組織のメンバーとして活動することをオブライエンに誓う。しかし、そんな二人を待っていたのは、あまりにも厳しい現実だった。

 徹底した管理社会の恐ろしさが、読んでいて怖かった。政府の方針が変わるたびに、過去の記録もそれに合わせてすべて書き直されるという徹底ぶりが怖い。記憶に残っていても記録に残っていなければ、その出来事は存在しなかったことになる、という理論が怖い。現在を統治する者が過去をも統治するということだ。
 「権力とは手段ではなく目的そのものだ」という権力者側の理論には、いくばくかの真理があると思った。単純に支配する側の人間になること、ただそれだけのために徹底した管理社会を築き上げることが政府の仕事になっているわけだ。そこには国家としての理想も思想もなく、ただ権力者集団としての政府を維持していくための行為しか存在しない。これを恐怖と呼ばずして何と呼ぶのか。
 この作品に登場する権力者に正義はない。しかし、なにがしかの真理はあるのではないかと感じた。



ANIMAL FARM  by George Orwell  07/05/26 更新

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物語の舞台はイギリスのとある農場。農場主の横暴に耐えかねた動物たちは、ある日一斉に蜂起して農場主の追い出しに成功する。知能の優れたブタのナポレオンとスノーボールをリーダーとして、自分たちだけの理想郷を作るために懸命に働く動物たち。しかし、ナポレオンと対立するスノーボールがナポレオンの陰謀により農場から追い出されたことをきっかけに、農場はナポレオンの独裁国家の様相を帯びてくる。ブタたちは農場の支配者として君臨し、それ以外の動物たちは労働者として搾取されるだけの存在になる。自分たちの理想郷を作っていると信じて疑わない動物たちだったが、実際にはブタによる独裁国家を作り上げているだけだった。

 ソ連のスターリン政権を痛烈に批判した作品らしいが、世界史にはまったく興味のない自分にとっては、作中のナポレオンに金正日の姿が重なって見えた。情報統制、処刑による恐怖政治、都合のいい責任転嫁、ありもしないデッチ上げなどなど、どれを取っても金正日にしか思えない。ちょうど金正日もブタのように丸々と太っているから、さらに作中のナポレオンと重なる。
 共産主義や全体主義の支配者ほどタチの悪い独裁者になってしまうという皮肉な真理がよく理解できる。つまりこうした政治体制は、リーダーだけに権力が集中しすぎるという欠陥があるということか。とりあえず、このあたりの政治的な思想は抜きにして読んでも十分に楽しめると思う。ブタたちがどんどん増長していく様子は、怖くもあり、腹立たしくもあり、滑稽でもある。さすがに名作、読んで損はない。



A CHILD CALLED "IT"
  
by Dave Pelzer  
06/01/07 更新

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小学生のデビッド少年は、優しい両親と仲のよい兄弟に囲まれて幸せな日々を送っていた。しかし、そんな幸せな生活は母親からの虐待という形で終わりを告げる。食事も与えられずに暴力を受け、反抗することすら許されずに母親の奴隷となって日々を送るデビッド。最愛の父親にも見捨てられ、母親からは「IT」とまで呼ばれて絶望するデビッドの壮絶な体験を描いたノンフィクション。


 作者自身の虐待体験を描いたノンフィクション作品。
 その凄まじいまでの虐待ぶりには寒気を覚えた。どうしたら自分の子供にここまで残酷になることができるのか、まったく理解できない。この母親に感じるのはもはや憤りではなく、背筋の寒くなるような恐怖である。憤りを覚えるのは、我が子の虐待を目の前にしながら何一つできなかった父親の方だ。何もできずに息子の虐待をただ眺めているだけの父親に、読んでいて憤りを覚えた。
 それにしても、何が母親をこれほどまでの虐待に走らせたのかがわからない。こういう病んだ人間の心の闇を一度でいいから覗いてみたいといつも思う。



ANNE OF GREEN GABLES
  
by L. M. Montgomery  
03/12/11 更新

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説明不要の「赤毛のアン」。

 激しく面白かった。読む前は、「こんなの、女子供の読む本だろ」などと思い切りバカにしていたのだが、そんな自分が恥ずかしくなるくらいに素敵な作品だと思う。
 美しい景色に素直に感動するアン、自分の赤毛にコンプレックスを抱くアン、想像の世界に浸りきるアン。そのいずれもが、素直で心優しい少女の姿を生き生きと描き出していて、自分のようなひねくれた人間の心をも洗ってくれるような、新鮮な感動がある。特に、アンが話す大げさな表現がいい。これが中途半端に翻訳された日本語だったら、ここまで素直に感動できなかったかもしれない。原書を読む楽しさというのは、このあたりにもあるような気がする。自分と同じように、食わず嫌いのあなたに激しくお勧めしたい。




THE RAINMAKER  by John Grisham  02/02/17更新

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法律学校の卒業を間近に控えた主人公のルディ・ベイラー。地元の中堅法律事務所への就職が内定していたルディだが、大手法律事務所との合併を理由に内定を取り消されてしまう。それと前後して彼女に振られ、アパートからの立ち退きを強制され、破産に追い込まれと、次々にルディを不幸が襲う。悪名高い弁護士の経営する事務所に何とか就職したのもつかの間、その雇い主も当局に追われて姿をくらまし、結局は自力で事務所を起こすことになってしまう。そんなルディの弁護士としての初仕事は、大手保険会社を相手取った巨額の賠償金を争う訴訟だった。莫大な資金力にものを言わせて一流弁護団を擁する相手に対して、丸腰のルディはどう立ち向かうのか?

 文句なく面白い! こういう法廷での原告と被告のやり取りを綿密に描写した作品は、まさに自分のツボ。主人公が貧しいルーキー弁護士なのに対し、相手が大企業と一流弁護士団という構図も、主人公に思いきり肩入れしながら読むことができていい。ルーキー弁護士の主人公が、百戦錬磨のベテラン弁護士を相手に、法廷でその高慢な鼻をへし折る場面などは、読んでいて本当に胸がすく思いがする。自分としては、文句なしに作者のベスト作品として推したい。
 ただ、ラストのエピソードに関しては、ちょっとだけ後味が悪い。このラストは必要なかったと思う。



BREAKHEART HILL  by Thomas Cook  01/11/13更新

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主人公のベンは、アメリカ南部の小さな町に住む高校生。ある日ベンの通う高校に転校して来たケリー。2人は学校新聞の編集作業をしていくうちに仲良くなっていき、ベンは深くケリーを愛するようになるが、どうしてもあと一歩のところで自分の思いをケリーに打ち明けることが出来ず悶々とした日々を送る。そんなある夏の日、"Breakheart Hill" で無惨な姿で発見されたケリー。容疑者が起訴されて有罪判決を受けるが、事件の裏に潜む重要な秘密を知るベンは、30年もの間かたくなに沈黙を守ってきた。はたしてその秘密とは?

生まれ故郷の町で開業医を営む主人公が、30年前の "Breakheart Hill" での事件を回想する、という形でストーリーが展開していく。一人称で過去を語って行く主人公が小出しに真実を明かしていくという展開で、焦れながらもどんどんとページをめくって行くという感じで、思いきり作者の術中にはまった。
 ラストのどんでん返しも秀逸だが、なにより主人公ベンの未熟で不器用な、しかし一途なケリーに対する想いがせつなく胸に迫る。自分も高校生の頃は、こんなふうに好きな女子のことを思いながら眠れぬ夜を明かしたことがあったなあ、などと思い出しながらノスタルジーに浸った。
 ミステリー作品としてはもちろんのこと、青春ラブストーリーとして読んでも充分に楽しめる作品。かなりお勧め。是非ご一読を。



THE GREEN MILE  by Stephen King  01/10/25更新

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物語の舞台は、電気椅子での死刑が執行されていた1932年のアメリカのとある刑務所。ある日看守長ポール・エッジコムのもとに、ジョン・カフィという大男の黒人死刑囚が送致される。ジョンの罪状は双子の白人少女に対する強姦殺人だが、凶悪犯らしからぬジョンの穏やかな言動にポールは興味を抱く。そんなジョンには、患部に触れただけでケガや病気を治すという特殊な能力が備わっていた。何度も奇跡を目の当たりにしたポールはジョンの無実を確信するが、看守長という立場ではジョンを死刑台から生還させることはできない。はたして無実のジョンは、残酷な電気椅子の犠牲となってしまうのか?

 毎月1冊づつ計6冊のペーパーバックの形式で出版された作品。書き下ろし作品がほとんどを占めるアメリカでは、こういった分冊形式での出版は画期的な試みらしい。
 分冊ということを意識してのことだろうが、各パートにおいて様々な伏線を張り、読者の興味を逸らすことなく次のパートへ繋いでいくという構成は見事だと思う。なんとも言えない独特な余韻を残すラストもいい。読み終えた瞬間は少し意外なラストだと感じたが、妙に後を引く読後感で、じわじわと感動がこみ上げてくる。文句なしにお薦めの1冊。



DISCLOSURE  by Michael Crichton  01/01/13 更新

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他会社との合併を目前に控えたコンピュータ機器会社に勤務するトーマス・サンダース。合併を機に副社長の座に就くはずだったトムだったが、実際にそのポストに就いたのは、トムのかつての恋人であるメレディス・ジョンソンだった。そのメレディスからセックスを強要されたトムはこれを断ると、激怒したメレディスは、トムからセクハラを受けたと会社の顧問弁護士に訴えることに。それを知ったトムも有能な女性弁護士を雇い、自分こそがセクハラの被害者であると訴える。合併を控え世間の評価に敏感になっている会社側は、なんとかしてトムの訴えを取り下げさせようと、様々な手段を講じ、最後にはトムを解雇させるべく罠を仕掛ける。無実の罪を着せられたトムの運命は?

 急速に成長するハイテク産業、ますます社会に進出する女性、それに伴い増加する「逆セクハラ」問題と、現代社会のエッセンスを巧みに取り入れた作品で面白い。汚い手を使うメレディスに腹を立てつつ、トムに思い切り感情移入しながら読んだ。多少コンピュータ用語が出てくる以外は非常に平易な文章なので、ペーパーバック初心者の方にもぜひお勧めしたい。
 それにしても、セクハラは本当に怖い。特に男性の場合、セクハラで訴えられれば、たとえそれが濡れ衣であったということが証明されても、一度失った信用や名誉はすぐに取り戻せるものではないだろう。自分もいつそうならないとも限らない。



THE TIGER'S CHILD  by Torey Hayden

 読み易さ 
 面白さ    えーい、おまけにもう一個

前作"ONE CHILD"の続編。本作は7年後に再会したティーンのシーラとトリイとの物語。前作ではハッピーエンドで終わったが、やはり現実はそんなに綺麗なものではなく、またまたいくつもの衝突を繰り返すシーラとトリイ。幼児期のトラウマを引きずったまま思春期という難しい時期に突入したシーラに真正面から向き合うトリイ。自分の存在を確かめるために母親探しに出かけるシーラだが、そこに待っていたのはまたしても「絶望」の2文字だった。

 前作の "One Child" に続き、またしても感動してしまった。これほど夢中になって読んだペーパーバックは初めてだ。どうしても先が読みたくて、勤務中にトイレの個室に本を持ち込んで読んだり(よい子の皆は真似しちゃ駄目だぞ)、電車の中で読んでいる時には涙を抑えるのに苦労したりと、なにかと大変だった。
 ノンフィクションだけに、ラストは万人が納得するハッピーエンドで終わる、というわけではないが、それだけにリアリティがあり、決して感動が薄れるということはない。こうした本に出会うと、英語を勉強してよかったと心から思える。これから先、何冊こういう本に出会えるのか楽しみだ。とにかく百聞は一読に如かず。ぜひともご一読を。



ONE CHILD  by Torey Hayden

 読み易さ 
 面白さ    えーい、おまけにもう一個

近所の3歳の子供を木に縛り付けて火を付け、重傷を負わせた6歳の少女シーラ。矯正のため入院させられるはずのシーラは、ベッドが空いていないという理由でトリイの受け持つ障害児のクラスに入れらる。少女の凶暴さに手を焼き困惑するトリイ。しかし真摯に接するトリイに、シーラも次第に心を開いて行く。アルコールとドラッグに溺れ、刑務所に入出所を繰り返す父親。幼いシーラを捨てて夫の元から逃げ出した母親。深い心の傷を負うシーラ。しかし、こんな劣悪な環境で育った少女としては信じ難い180以上という IQ を持つシーラを、トリイはわが子に与えるような愛情で接する。

 とにかく読むべし。感動すること間違いなし。最近感動してないなあ、泣いてないなあ、というあなた。感動して下さい、泣いて下さい。



DOLL  by Ed Mcbain

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 面白さ    

若く美しい女性が何者かに殺害されるという事件が発生する。捜査にあたるスティーブ・キャレラと後輩のバート・クリング。何事にも反抗的なクリングに手を焼くキャレラは単身捜査に乗り出し、犯人をつきとめる。しかし逆に犯人に捕らわれてしまい、キャレラと思われる死体が後日発見される。責任を痛感し捜査を開始するクリング。事件解決の鍵を握るのは、1体の人形だった。

 1965年に出版された「87分署」シリーズの一作。
 このシリーズは1956年から始まって現在まで続くロングシリーズで、1965年という比較的初期に書かれた本作はやはりそのディティール設定に多少の古臭さは感じるものの、そんなことは気にならないくらいに面白い。特にラストは、文字通り手に汗を握って読んだ。ペーパーバック初心者からベテランまで、文句なくお勧めの1冊。



VANISHED  by Danielle Steel

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資産家の男性の妻として何不自由ない暮らしを送っていた主人公。幼い息子と散歩に出かけた彼女は、別れた元の夫と偶然に出くわす。事故で子供を失ったことが原因で離婚した元夫は、彼女が連れている子供を見て逆上する。そして次の日、主人公の息子が姿を消してしまう。容疑者として逮捕された元夫は法廷で主人公と対決することに。本当に元夫が犯人なのか、そして姿を消した息子の安否は?

 文句なく面白い! 著者一流のストーリー展開に加え、ミステリー的な要素も加わっているため、ラストは一気に読ませる。読みやすくて面白い、まさに一粒で二度美味しい作品。お薦めの1冊。



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