RICHARD PAUL EVANS 




 家族愛をテーマにした作品を得意とするアメリカの作家。
 1962年にユタ州のソルトレークシティで生まれた作者は、ユタ大学を卒業後、広告代理店に勤務する。仕事のかたわら自分の娘たちのために書いた「The Chiritmas Box」がクチコミで評判となり、1993年に自費出版したところ、たちまちのうちに全米ベストセラーになる。その後に発表した作品も次々とベストセラーになり、人気作家の地位を不動のものとする。このほかに、子供向けの作品も何作か発表している。執筆活動のかたわら、恵まれない子供たちのための慈善活動にも積極的に取り組んでいる。
 作者の書く文章は比較的やさしく、家族愛という普遍的なテーマを扱っていることもあり、初心者にとっても読みやすい。その分、内容が少しだけ薄く感じてしまうかもしれない。




THE LOOKING GLASS    08/10/12更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は、ゴールドラッシュに沸く19世紀のアメリカ。主人公のヘンリーは、神父の職を捨てて遠く離れた土地で金脈を探していた。仲間とのポーカーが原因でトラブルを起こしたヘンリーはその鉱山から逃げ出すが、その途中で偶然にも大きな金脈を発見する。たちまちのうちに富を手に入れたヘンリーは、ある吹雪の夜に、危うく遭難しかけた若い女性を救出する。クェイと名乗るそのアイルランド人女性が、飢饉に苦しむ両親によってわずかな金と引き換えにアメリカ人男性に売られ、毎日のようにひどい暴力を受けていることを知ったヘンリーは、クェイに深く同情する。クェイを看病するうちに、この女性に強く惹かれていく自分を意識するヘンリーだったが、彼には忘れることのできない辛い過去があった。

 ヘンリーもクェイもいい大人なんだから、そんな小説みたいにセンチメンタルなことばかり言わず、早くやることやってくっついちゃえばいいのに、というのが率直な感想。そんな、死んだ妻がどうの、暴力夫がこうのとつまらない理屈なんてつけなくていいから、いまの自分の気持ちに素直になりなさい。
 ということで、本当にどこにでもあるような安っぽいラブストーリーで、特にこれといって書くこともない。タイトルの「Looking Glass」にしても、作中でほんの言い訳程度に手鏡が出てくるだけで、このタイトルの必然性がよくわからない。なんだか、後から無理矢理付けたようなタイトルだ。とはいえ、何も考えずに暇つぶし程度で読むには手ごろな1冊だと思う。お暇ならどうぞ。



THE CAROUSEL    08/07/19更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の主人公は、若い恋人同士のマイケルとフェイ。フェイの父親に交際を反対されている二人は、フェイがメディカルスクールに留学する前夜、二人で密かに結婚式を挙げる。ユタ州とメリーランド州とに離れて暮らす二人は、毎日のように電話で連絡を取り、お互いの気持ちを確かめ合う。しかし、フェイがマイケルの子供を妊娠していることがわかり、二人は思い悩む。クリスマスにフェイが帰省したときに、両親にすべてを打ち明けようと決めた二人だったが、クリスマスイブにフェイの妹が自殺をしてしまう。さらに、傷心のまま学校に戻ったフェイが流産をしてしまい、フェイは悲しみに打ちひしがれる。フェイの悲しみを思うマイケルは、車を飛ばしてフェイに会いに行くが、すべてに絶望したフェイはマイケルに別れを切り出す。

 この作品は、主人公であるマイケルの一人称で書かれているのだが、いつの間にか三人称になっているというおかしな展開になっている。章を分けてあるのならば問題はないのだが、何の予告もなくいつの間にか物語の視点が変わるので、読んでいてどうにも落ち着かない。以前に読んだ作品にもこうした視点の移動はあったように思うが、この作品は特にそれが気になった。
 肝心のストーリーはというと、なんだか不幸のてんこ盛りみたいな感じで、ちょっと話を作りすぎなんじゃなかろうかと思った。ひとつひとつの出来事だけを見ると、どこにでもありそうな、誰でも経験していそうなことだが、それがまとめて一時に起きてしまうと、読むほうとしてはなんだかしらけてしまう。その埋め合わせなのかどうかはわからないが、最後は強引なまでのハッピーエンドで終わるのも、どうなのかと感じてしまう。
 読んだ後は特に何も残らないが、難しいことを考えずに読めるので、ヒマつぶしにはいいんじゃないだろうか。



TIMEPIECE    08/05/31更新

 読み易さ 
 面白さ   

会社を経営するデビッドの元に、メアリーが秘書として面接に訪れるところから物語は始まる。デビッドは清楚で理知的なメアリーに好意を抱くが、メアリーの態度はどこかよそよそしい。そんなある日のこと、メアリーが以前の恋人との間にできた子供を妊娠して悩んでいることを知ったデビッドは、迷わずメアリーにプロポーズをする。デビッドの誠意に感激ししたメアリーは、このプロポーズを受け入れる。難産の末に娘のアンドレアに恵まれたデビッドとメアリーは、これ以上ない幸福な生活を送る。しかし、デビッドの友人である黒人のローレンスが白人の夫人から高価な時計を譲り受けたことが原因で、思わぬトラブルに巻き込まれてしまう。

 順序は違ってしまったが、「The Christams Box」三部作の第二部である「Timepiece」を読んでみた。なるほど、こういうお話だったのか。「The Letter」でイマイチよく理解できなかったところが、この作品を読んでようやく納得できた。やはりこういうシリーズ物は順番どおりに読むべきだ。
 この作品は、最初こそハッピーな展開なのだが、最後は悲しい結末のまま終わってしまう。自分の信念に従ってどんなに善行を尽くそうとも、周囲の理解のない人間の心無い仕打ちによって、その善行が報われないこともあるということだ。いや、実際の世の中では、そうした理不尽なことのほうがずっと多いのだろう。そうした理不尽を自分の中でどう折り合いをつけて生きていくのか、人生とはそんなことの繰り返しなのかもしれない。この作品を読んで、そんなことを少しだけ考えた。



THE LETTER    08/05/24更新

 読み易さ 
 面白さ   

デビッドとメアリー夫妻は、最愛の娘アンドレアを亡くした悲しみから立ち直ることができずにいた。そんな生活に耐えられなくなったメアリーは、デビッドに何も告げないまま家を出てしまう。メアリーに去られて深い悲しみに暮れるデビッドは、幼い頃に自分のことを捨てた母親のローズのことを思い出し、ローズを探しにシカゴに出かける。その旅先で出会ったのは、若くて美しいディアドラ。お互いに好意を抱く二人は次第に親しくなっていくが、デビッドの心の中には常にメアリーが存在していた。

 「The Christams Box」三部作の完結編らしい(第二部として「Timepiece」という作品が存在するようだ。読む順番を間違ってしまった)。
 この作品もいいお話なので、安心して読むことができる。ただし、登場人物がすべていい人ばかりなので、読んでいて少しばかり退屈する。こんな人たちばかりなら、この世の中はさぞや素敵なものになるのだろう。しかし、こんなにきれいごとばかりではないのが世間というもの。こういういいお話を読むと、どうしても嘘っぽいというか薄っぺらいというか、結局は作り話なんだという底の浅さを感じてしまう。
 とはいえ、こういうひねくれたことを考えずに単純に「いいお話」として読めば、それなりに感動できる作品だとは思う。内容はともかく、さらりと読めるので、暇つぶしとして読むにはお勧め。



THE CHRISTMAS BOX   08/05/10 更新

 読み易さ 
 面白さ   

大邸宅に独りで暮らす未亡人のメアリーは、一緒に同居生活を送る家族を募集する。これに応募したのが、幼い娘を持つリチャードとケリーの若い夫婦。4人は、まるで以前から一緒に暮らしていた家族のように、仲良く楽しい毎日を送る。そんなある日のこと、メアリーが脳腫瘍におかされ、もはや手遅れな状態であることがわかる。悲しみに暮れるリチャードは、屋根裏部屋に置かれた立派なクリスマスボックの中に、何通かの手紙がしまってあることに気付く。その手紙には、メアリーの悲しい過去が記されていた。

 おそらく、心暖まるいいお話なんだろうと思う。ただ、これと似たような話はどこにでも転がっているので、それほど感動できるものではない。この歳になるとそれなりに読書量も増えてきているので、これくらいのいいお話では感動できない体になっているらしい。
 この作品を思い切り乱暴にまとめると、子供はすぐに成長してしまうから、両親はその貴重な時間を大事に過ごさなければいかんよ、というお話だ。素直な心の持ち主であれば、おそらくは感動できる作品なのだと思う。



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