ROALD DAHL 




 短編小説と児童文学で有名なイギリスの作家。
 1916年にウェールズに生まれた作者は、高校卒業後にシェル石油に入社する。第二次世界大戦が勃発すると、空軍のパイロットとして従軍し、ヨーロッパ各地を転戦する。そのときの体験を基に短編を書き始め、短編作家としてデビューする。その後児童文学も書き始め、この分野でも第一人者としての地位を確立する。1990年没。阿刀田高が好きな作家の一人としてダールの名前を挙げているらしい。たしかに両氏とも、気の利いたオチの面白さには共通するものがあると思う。
 児童向けに書かれた作品は、当然ながら読みやすい。しかしその内容は、大人が読むにはちょっと辛い。




DANNY THE CHAMPION OF THE WORLD  17/09/03 更新

 読み易さ 
 面白さ   

9歳のダニー少年は、ガソリンスタンドと自動車修理工場を経営する父親と二人きりで小さな馬車に住み、父親からいろいろな遊びを教わりながら楽しく暮らしていた。そんなある日のこと、夜中に目を覚ましたダニーは、父親が家にいないことに気付き、何があったのかと心配する。帰ってきた父親は、地元の名士であるヘイゼル氏が所有する森に出かけてキジを密漁していたと話す。それから数日後にまた父親が密漁に出かけるが、約束の時間になっても戻ってこない。ダニーは、修理のために預かっていたクルマを恐る恐る運転しながら森に行き、大きな落とし穴にはまって脚を骨折している父親を探し出す。なんとか父親を助け出すことができたが、それからというもの、父親の様子がなんだかおかしい。話を聞くと、森のキジをすべて捕まえてヘイゼルに一泡吹かせたいという。そこで、ダニーは素晴らしいアイデアを思いつく。

 ダール氏の書く子供向けの作品は、どれもこれも荒唐無稽な設定ばかりだけれど、この作品の設定はかなりリアリティがあって面白かった。少年と父親の愛情あふれる様子が描かれていて、ブラック好きのダール氏にしてはかなり直球勝負だなという印象を持った。とはいえ、いくらヘイゼル氏が嫌なヤツだとしても、密漁という行為が肯定されていいということにはならない。このあたりが、やっぱりダール氏らしいといえばらしい。一つだけ残念だったのが、体罰教師に何らかの報復を加えてほしかったという点だ。それ以外は、ラストもさわやかだし、捕まえたキジをどうするかという落としどころもきれいに決まっていて、いいと思う。
 このキジを捕まえるというテーマについては、ダール氏の自伝かなにかで読んだような覚えがある。子どもの頃の体験をそのまま子供向けの作品のテーマにするなんて、ちょっと素敵だと思った。



THE BFG  17/08/06 更新

 読み易さ 
 面白さ   

孤児院で暮らす8歳の少女ソフィーは、ある日の深夜に7メートルを超す身長の巨人がロンドンの街を歩いているところを見てしまい、巨人に連れ去られてしまう。巨人に食べられてしまうことを覚悟したソフィーだったが、その巨人は自分のことを BFG (Big Friendly Giant) と名乗り、人間を食べることはないという。しかし、BFGが住む巨人の国には、BFGの倍の背丈がある巨人が9人いて、毎晩のように世界各地に出かけては人間を食べていた。それを知ったソフィーは、巨人たちの蛮行を止めるためにエリザベス女王に直訴する計画を考え、BFGとともにロンドンへと向かう。

 子供向けの作品ということで、突っ込みどころ満載の設定だが、それは作者も充分承知の上のことだろうからいいとしても、どうしても納得できない設定が1つだけある。それは、学校に通えなかったBFGが曲がりなりにも英語を話せるのは、ロンドンで子供の家から「借りた」1冊の本を読んで勉強したからという設定になっているのに、他の巨人たちもBFGと同じようにおかしな英語を話すことができるという点だ。まさか、人食い巨人たちも同じように勉強したとは思えないし、これはどう考えてもおかしい。他の荒唐無稽な設定については、荒唐無稽であるがために受け入れることができるが、こうしたリアルな設定については、ちゃんと理屈がとおるようにしてほしい。



KISS KISS  14/01/05 更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

11の短編を収めた短編集。

 笑える作品あり、背筋が寒くなる作品ありと、非常にバラティに富んだ短編集。どの作品も面白いが、ベストを選ぶとしたら「Parson's Pleasure」と「Mrs. Bixby and the Colonel's Coat」になりそうだ。どちらもストーリーの展開が抜群にうまくて、本当に一気に読めた。どちらの作品も、あと一歩のところで主人公の計画が成功しそうになるけれど、最後の最後でどんでん返しが待っていて、最後まで楽しく読むことができる。「Pig」はまったく予想外のラストで、こういう無慈悲なブラックさが、良くも悪くもダールらしいところだと思う。とにかく、非常に粒ぞろいの短編集で面白い。



ESIO TROT  08/09/06 更新

 読み易さ 
 面白さ   

アパートに一人で住むホッピーおじさんは下の階に住む未亡人のシルバーおばさんのことが大好きだが、内気なおじさんは自分の気持ちを打ち明けることができずにいた。そんなある日のこと、ペットのカメがなかなか大きくならないという相談をシルバーおばさんから持ちかけられたおじさんの頭に、一つの考えが浮かぶ。なんとかしてシルバーさんと仲良くなりたいと願うおじさんは、早速そのアイデアを実行に移す。

 小学校低学年向けに書かれた作品であるにも関わらず、初老の男性と中年女性との恋愛がテーマ(というほど大げさなものではないけど)になっていて、このあたりがダール氏らしいところと言えるのかもしれない。
 しかし肝心のストーリーの方は、ダール氏らしい毒があるわけでもなく、ごく普通の子供向け童話という感じで、特に面白いわけでもなく、かといって特につまらないわけでもない。ということで、特に書くこともない。



MY UNCLE OSWALD  08/04/26 更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公のオズワルドは、頭脳明晰にして容姿端麗な青年。17歳のとき、アフリカに生息するカブト虫が強烈な媚薬になることを知ったオズワルドは、この粉末状の媚薬を大量に仕入れて各国の大使に高値で売り、大金を稼ぐことに成功する。その後大学に入学したオズワルドはワースレイ教授と知り合い、この教授が精子の永久保存に成功したことを聞かされる。オズワルドは、ヨーロッパ中の偉人から精子を採取し、ワースレイ教授が開発した技術によって精子を保存して、偉人の子供を欲しがっている女性にこの精子を高値で売ることを思いつく。この商売のパートナーとしてオズワルドが選んだのは、同じ大学に通う若くて美しいヤスミン。2人はヤスミンの美貌とカブト虫の媚薬を武器にヨーロッパ中を駆け巡り、偉人の精子集めに奔走する。

 全編下ネタ満載で、かなり引いた。こういうのは、読んでいてあまり気持ちのいいものではない。救いとなるようなユーモアも、あるようでないような感じで、どうしても嫌悪感が先にたってしまう。
 物語に出てくる偉人たちはすべて実在の人物で、ルノアール、モネ、ピカソ、フロイト、アインシュタインなどの錚々たる名前が並ぶ。しかし、こういう偉人たちも一皮むけばただの男で、媚薬を飲まされていきなり豹変するところが面白い。ただ、読みどころはそこくらいのもので、あとは同じことの繰り返しが延々と続くだけなので、読んでいて飽きる。シャレの効いた大人の童話ととるか、低俗で下品なホラ話ととるかによって、好みがはっきりと分かれる作品だと思う。



BOY TALES OF CHILDHOOD   08/04/05 更新

 読み易さ 
 面白さ   

自分の少年時代を回想した自叙伝。

 本書では、ダール氏の6歳から20歳までの思い出が綴られている。なるほど、両親ともにノルウェー人だから、イギリス生まれのイギリス育ちでありながら、ダール氏自身も生粋のノルウェー人ということになるわけか。
 この作品では、全寮制の学校での生活が主に描かれているが、どの学校の先生も体罰の大好きなひどい先生ばかりだったようだ。本当にこんなにひどい先生ばかりなのかと疑問に思ってしまうが、ダール氏によると "All are true." といことだから本当なのだろう。よくこれで、子供たちはグレたりしないものだ。少しでも体罰らしきことがあるとヒステリックに騒ぎ立てるいまの日本とはえらい違いだ。
 毎年夏休みになるとノルウェーに里帰りしていたということで、フィヨルドで家族とともに楽しく過ごす様子が描かれている。このくだりを読んで、自分もいつかはフィヨルドに行ってみたいと思った。



GEORGE'S MARVELOUS MEDICINE   08/03/15 更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公のジョージ少年は、一緒に暮らす意地悪なお祖母さんに毎日いじめられていた。そんなお祖母さんに仕返しをしようと、ジョージは家にあるものをかたっぱしから混ぜて特製の薬を調合する。それを飲んだお祖母さんは、口から煙を吐いてどんどんと背が伸びていき、家の屋根を突き抜けてしまう。家の家畜たちにも薬を飲ませてみたところ、みんな同じように大きく成長する。それを見た父親はこの薬で一儲けしようと考え、ジョージにまた薬を調合するように頼むが、材料の内容と量が正確に思い出せないため、同じ薬を作ることができない。そんな出来損ないの薬をお祖母さんが間違って飲んでしまったため、大変なことになってしまう。

 ダール氏は、本当にこういうブラックなお話が好きだ。主人公である少年や少女の肉親を悪役に仕立て、その悪役を主人公の子供がやりこめるというストーリーが得意なパターンらしい。日本の児童書ではめったに見られないパターンだと思う。
 しかし、いくら悪役に仕立てられているとはいえ、自分の肉親と敵対するという構図は、読んでいてやっぱりあまり気持ちのいいものではない。ごく普通に赤の他人を悪役にすればいいだけだと思うのだが、あえてそうしないところにダール氏の意図するものがあるのだろう。しかし理由はどうあれ、こういう構図は読んでいて楽しくないことだけは事実。



MORE TALES OF THE UNEXPECTED   08/01/05 更新

 読み易さ 
 面白さ   

9つの短編を収めた短編集。

 "The Umbrella Man"、"Mr Botibol"、"Vengeance Is Mine Inc." の3編が面白かった。"The Umbrella Man" はなんともセコい詐欺師の話で、そのセコさ加減と詐欺のアイデアが面白い。"Mr Botibol" は、内気な主人公が趣味の世界に没頭しているときだけ自分を解放する際の描写が面白い。"Vengeance Is Mine Inc." は、復讐請負人という発想のバカバカしさと、そのバカな計画を真剣に実行する男たちの描写が面白い。
 特に傑出した作品があるわけではないが、どれもそこそこに楽しめる作品がそろっている。ちょっとしたヒマつぶしに最適の1冊。



CHARLIE AND THE GREAT GLASS ELEVATOR   07/09/29 更新

 読み易さ 
 面白さ   

チョコレート工場の経営者ワンカとチャーリー一家は、空飛ぶエレベーターに乗り込んで宇宙に飛び出す。そこで見つけたのは、アメリカが建設した世界初の宇宙に浮かぶ巨大なホテル。チャーリーたちはホテルの中に入るが、そこには恐ろしい怪物が潜んでいた。自由に形を変えることができる怪物たちが、一斉に空飛ぶエレベーターに襲いかかる。空飛ぶエレベーターは、この恐ろしい怪物から逃げることができるのか。

  この作品は、"Charlie and the chocolate factory" の続編らしい。
 前作はなかなか面白かったが、この作品は面白くない。物語の前半と後半がまったくつながっていないので、読んでいて違和感がある。思い切り簡単にまとめると、ベッドから出ようとしない怠け者のじいさんばあさん連中をワンカがあの手この手でベッドから出そうとする、というお話だが、それならそれでもっとわかりやすいストーリー展開にしてほしい。いきなり宇宙に飛び出したりしなくてもよさそうなものだ。結論としては、話の展開が唐突すぎてまったく必然性のないところが読んでいて疲れる、ということだ。



SOMEONE LIKE YOU   07/09/22 更新

 読み易さ 
 面白さ   

14の短編を収めた短編集。

 以前に読んだ "Tales of the Unexpected" に収録されている作品が半分以上を占めている。出版されたのは "Someone Like You" の方が先らしいから、"Tales of the Unexpected" はダール氏の代表作を集めたベスト版といったところか。
 ということで、未読の作品はどれもイマイチ。ダール氏の作品にしてはオチがよくわからないものもあって、ちょっとだけ難解。その中でも、"The Wish" はなかなか面白かった。誰しも子供の頃は、こういうくだらないルールを作って遊んだ覚えがあるはず。さらに、この作品は最後の一行が非常によく効いている。このオチで思わず微笑んでしまうこと間違いなし。



MATILDA   07/07/14 更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公のマチルダは、5歳にして早くもチャールズ・ディケンズやヘミングウェイを読みこなす天才少女。家では父親や母親から邪険に扱われているが、そのたびに仕返しをして気分を晴らしていた。入学した小学校では、若くて優しいハニー先生が担任になり、毎日楽しく過ごすマチルダ。しかし、女校長のトランチブル先生は大の子供嫌いで、気に入らない子供には容赦なく体罰を与える凶暴な先生だった。ある日のこと、大好きなハニー先生がトランチブルからひどい仕打ちを受けていることを知ったマチルダは、仕返しをしようと計画を立てる。はたして、マチルダの計画は成功するのか。

 ダール氏の子供向けの作品はつまらないと思っていたが、これは予想外に面白かった。なんと言っても、トランチブル先生の悪役ぶりがいい。読んでいて腹が立つくらいに徹底した悪者として描かれているため、かよわいハニー先生との善悪の対比がより鮮明になり、読んでいて感情移入しやすいところがこの作品のいいところだと思う。
 それにしても、マチルダの実の両親までも悪役に仕立てたのにはどんな意図があるのだろう。ごく普通に意地悪な継母とか伯父さん伯母さんあたりを悪役として設定した方が、もっとすっきり読めたと思う。それはそれとして、非常によくできた面白いお話であることには間違いない。大人が読んでも十分に楽しめる。



CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY   07/04/07 更新

 読み易さ 
 面白さ   

大好きなチョコレートを誕生日にしか買ってもらえないほど貧しい家に住むチャーリー少年は、近所にある大きなチョコレート工場からもれてくる匂いをかぎながら学校に通っていた。その工場には誰も入ったことがなく、周囲からは秘密の工場と噂されていた。そんなある日のこと、金の招待状が入ったチョコレートを買い当てた5人の子供には、一生分のチョコレートと工場への招待をプレゼントすると経営者のワンカが発表する。幸運にも金の招待状を当てたチャーリーが工場の中で見たものとは。

 チャーリー以外の4人のわがままな子供たちに対するワンカのお仕置きが、読んでいて気持ちいい。子供がわがままに育ったのは親の責任とばかりに、子供たちの親も一緒にお仕置きされるところがさらに気持ちいい。ガキの頃から甘やかされるとロクなことにならないぞ、というわかりやすいメッセージが気持ちいい。
 メッセージと言えば、子供はテレビばかり見ていてはダメ、テレビの代わりに本を読め、というメッセージも書かれているが、これはいかがなものか。たしかにテレビばかり見ている子供はどうかと思うが、本ばかり読んでいる子供も同じようにどうかと思う。テレビだってそれほどバカにしたものではないし、本だってそれほどありがたがるほどのものでもない。なにごともバランスが大事。



THE WONDERFUL STORY OF HENRY SUGAR AND SIX MORE   07/03/03 更新

 読み易さ 
 面白さ   

表題作を含む7つの短編を収めた短編集。

 "The Hitch-hiker" 以外は、どの作品もオチが中途半端。"The Mildenhall Treasure" はノンフィクションだから仕方ないにしても、"The Swan" は、ここまで盛り上げておいてこのオチですか、といった感じ。主人公の少年がもう少しで殺されるというところまでいじめられているのに、いじめた少年には何のおとがめもなしというのが納得できない。もっとわかりやすくて痛快なオチにしてほしい。
 この作品集には、作者の自伝とも言うべき "Luck Break" と、作家としてのデビュー作となった "A Piece of Cake" も収録されているので、ダール・ファンにとっては必読の1冊と言えそう。



TALES OF THE UNEXPECTED   07/01/20 更新

 読み易さ 
 面白さ   

15の短編を収めた短編集。

どの作品も、ラストまでの盛り上げ方が抜群にうまい。それだけに、どの作品もオチがいまひとつなのが残念。とはいえ、そうそう意表を突く完璧なオチを期待するのは無理な話だろう。若干オチが弱いことを除けば、どの作品も充分に楽しめる。
 特に面白かったのは、"Parson's Pleasure""Mrs Bixby and the Colonel's Coat" の2作品。前者はイソップ童話のようなオチが秀逸で、後者はクスリと笑えるオチが面白い。これ以外の作品も充分に面白く、かなりレベルの高い作品集だと思う。気軽に読書を楽しみたいときにお勧めの一冊。



JAMES AND THE GREAT PEACH   06/12/23 更新

 読み易さ 
 面白さ   

7歳のジェームス少年は、幼い頃に両親を亡くし、いじわるなおばさん二人に毎日いじめられながら暮らしていた。ある日、見知らぬおじさんから魔法の小石をもらうが、誤って地面にすべて落としてしまう。それから間もなく、庭の桃の木に大きな大きな桃の実がなり、ジェームスは桃の中に入っていく。桃の種の中にいたのは、自分よりも大きな昆虫たち。ジェームスと昆虫たちは、大きな桃に乗って冒険に出る。

 子供たちはこういうお話を面白がるのか。自分も子供の頃はこういうお話が好きだったのかと考えると、おそらくそうではなかったと思う。いくら子供向けにしたって、設定があまりにもありえなさすぎる。小学生の自分がこの作品を読んだとしても、きっとつまらないと感じたはず。



FANTASTIC MR. FOX   06/12/23 更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公のキツネは、嫌われ者の3人の農場主の家から繰り返し食べ物を盗んでいた。これに怒った3人は、あの手この手でキツネを捕まえようとする。人間とキツネとの知恵比べの勝者はどちらに。

 これは明らかにキツネのほうが悪い。いくら嫌われ者だからって、人の物を盗んだらいけません。子供に読ませる本なんだから、悪いことは悪いとちゃんと書かないと。これを読んだ子供が、「なるほど、泥棒をしてもバレなきゃいいのか」なんて思ったらどうするの。



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