MICHAEL CRICHTON 




 SFやミステリーなど、広いジャンルのエンターテイメント作品を手がけるアメリカの作家。
 1942年にシカゴで生まれた作者は、ハーバード大学で人類学を学んだのち、ハーバード・メディカルスクールで生物学を学ぶ。この頃から小説を書き始め、1969年に発表された「アンドロメダ病原体」が一躍ベストセラーとなる。その後の活躍は説明するまでもなく、「ジュラシック・パーク」や「ライジング・サン」など、翻訳本はもちろん、映画化されている作品も数多い。日本で最も著名なアメリカ人作家の一人。2008年、癌のために66歳で亡くなる。
 ベストセラー作家ということで、文章は比較的平易で読みやすい。非常に映画的な描写がクライトン氏の作品の特徴で、ペーパーバック初心者でも楽しく読むことができるはず。



THE LOST WORLD  12/09/02 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ジュラシック・パークでの事件から6年が経過し、恐竜たちは絶滅したものと思われていたが、コスタリカの沿岸に謎の生物の死体が打ち上げられるという出来事が発生する。生物学者のレバインは、この生物の正体を確かめようと、コスタリカ沖の孤島に乗り込む。しかし、レバインとの連絡が途絶え、心配した仲間たちもレバインの後を追って島にたどり着く。それと同時に、恐竜をビジネスの道具にしようともくろむドジソン一行も島に上陸する。そんな彼らを待ち受けていたのは、エサに飢えた獰猛な恐竜たちだった。

  ジュラシックパークの続編にあたる作品らしい。前作に出てきたキャラクターも何人かいるらしいが、ジュラシックパークを読んだのはだいぶ前のことだから、まったく覚えていない。とりあえず、単独の作品として読んでも特に問題はないと思う。
 物語の中盤までは、学者のマルコムが恐竜絶滅の新しい仮説を語ったりして、比較的静かに進んでいくのだが、後半になるといきなり肉食恐竜とのバトルが展開され、そのまま一気にラストまでなだれ込む。このあたりの力技ともいうべき展開はさすがにクライトン氏らしいが、エンジニアのエディをあんな形で死なせてしまうことはないのにと思った。エディはけっこうナイスガイでお気に入りのキャラクターだったので、死んでしまったときはちょっとショックだった。
 ジュラシックパークを読んだときにも感じたことだが、人類も近い将来に間違いなく絶滅するのだろう。こんなペースで増殖を続け、地球上の食料や資源を消費し続けていったら、どう考えても人類にとってハッピーな未来は訪れないような気がする。



BINARY  07/05/06 更新

 読み易さ 
 面白さ   

米国政府の諜報員であるグレイブスは、ジョン・ライトという人物が政府のデータベースに不正にアクセスしていることを知る。張り込み調査を続けるグレイブスは、タンクやポンプや洗剤などを買い込むライトの奇妙な行動に頭を悩ませる。やがて、ライトの目的が毒ガスの製造にあることを知ったときには、すでに毒ガス噴霧の準備は完了していた。100万人もの殺傷能力を持つ毒ガスの噴霧が刻一刻と迫る中、グレイブスは二重三重に仕掛けられたライトの罠を見破って毒ガスの噴霧を阻止することができるのか。

 1972年に John Lange の名義で出版された作品。毒ガスを使ったテロというテーマは、当時は斬新だったのだろうが、今読んでみると特にどうということもない。事件解決までのタイムリミットを最初に設定し、そこに向かってストーリーが進んでいくという作者の得意とする展開はこのときから早くも確立されているが、ラストまでの盛り上げ方がイマイチ。さすがのクライトン氏も、やはりこの頃はまだ若かったのだろう。
 しかし、当時から毒ガスを使ったテロの可能性に気付いていたのはさすがだと思う。ただ、常に時代の最先端を行く作風だからこそ、この作品のように旬を過ぎた途端に色あせてしまうのが辛いところ。



THE 13th WARRIOR  05/12/23 更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は10世紀の北欧。主人公のファドランは、バグダッドからの使者として北欧を旅する途中でバイキングの一団と遭遇し、彼らの村に滞在することになる。そんな彼らの元にメッセンジャーが訪れ、怪物によって自分たちの村が襲われていることを告げる。それを聞いたバイキングたちは、この村を救おうと立ち上がり、ひょんなことからファドランも13人目の兵士として彼らに加わることになった。死肉を食う怪物「ウェルドン」に立ち向かう彼らの運命やいかに。

 実在する史料を基に書かれた作品らしい。10世紀の雰囲気を出すためか、文章も古臭い表現が使われていて若干読みづらい。
 それにしても、このバイキングたちのタフなこと。死をも恐れずに相手に向かっていったり、戦闘で大怪我を負っても大酒を飲んでどんちゃん騒ぎをしたりでかなり素敵だ。主人公のアラブ人ファドランも最初のうちこそヘタレだったが、最後には立派な戦士に成長しているところがいい。
 あまりにも話がうまくできすぎていて、なんだか安っぽいロールプレイングゲームの雰囲気が全編に漂っているが、これが実話だというから驚きだ。本当に全編ノンフィクションかどうかはかなり怪しいが。



CONGO  05/08/12 更新

 読み易さ 
 面白さ   

アメリカの資源開発技術社のERTSが、ダイヤモンドの鉱脈を求めてアフリカのコンゴに調査隊を派遣した。しかし現地から送られてきた映像には、無残にも全滅した調査隊の姿と、ゴリラに似た動物とが写っていた。真相を解明するため急遽第二次調査隊が編成され、ERTS社の女性エンジニアであるロスが隊を率いることに。動物学者のエリオット、手話を話すゴリラのエイミー、現地案内人のマンローたちもメンバーに加わり、謎の古代都市ジンジを目指す。いくつもの危機を乗り越えてジンジにたどり着いた彼らを待っていたものとは?

 ちょっぴりSFタッチの冒険小説といった趣きの作品。
 冒険小説のわりにはいまひとつ緊迫感に欠ける気がしないでもない。読んでいてまったくと言っていいほど、ハラハラドキドキ感がなかった。ラストに至るまでの展開がダラダラしすぎているのかもしれない。コンピュータの知識やゴリラの生態やアフリカの歴史などの説明がところどころ入るが、これが退屈。せっかくのラストもほとんど盛り上がらない。ただ、手話を話すゴリラのエイミーはなかなか愛らしくてよかった。愛らしいエイミーに免じて、面白さの評価はギリギリ というところか。



JURASSIC PARK  01/08/04 更新

 読み易さ 
 面白さ   

遺伝子操作により絶滅した恐竜を現代に蘇らせ、コスタリカ沖合の無人島に「ジュラシック・パーク」を極秘裏に建設中のアメリカの企業家は、パークの安全性をアピールするために、外部から専門家を招いてパークを案内する。すべてがコンピュータシステムにより管理されているパークは一見何の問題もなく運営されているかに見えたが、突然システムがダウンしてしまい、それまでの管理から解き放たれた肉食恐竜達が次々にパーク内の人間を襲い、たちまちのうちにカオスに陥ってしまうジュラシック・パーク。コンピュータという最大の武器を失ってしまった人間は、恐竜の前ではあまりにも無力な存在だった。

 映画でも大ヒットを記録した本作は、著者の数ある作品の中でも最も有名な作品の一つ。人間が地球上の全ての現象をコントロールすることが出来るというのははなはだしい思い上がりだ、というのがこの作品のテーマのようだが、自分もまったく同感。本作中に「今地球は深刻な状況に陥っている、という意見があるが、今の状況は45億年の歴史を経験して来た地球にとっては全く問題にならないくらいの一瞬の出来事だ。深刻な状況に陥っているのは、むしろ我々人間の方である」という下りがあるが、これはまったくそのとおり。あまり考えたくはないが、恐竜と同じように我々人類も将来絶滅してしまうのだろう。



TIMELINE  01/07/20 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ハイテク企業 ITC社の資金提供を受けて、中世フランスの城下町の発掘作業にあたるジョンストン教授と教え子たち。発掘作業中にITC社の対応に不信感を抱き社の上層部に説明を求めた教授は、ITC社が極秘裏にタイムマシンを開発していることを知る。そのタイムマシンに乗り込み、自身が発掘作業を進める14世紀のフランスに降り立つ教授だが、不運にも捕らわれの身となってしまう。ITC社の要請を受けて教授の救出に向かう3人の教え子たち。彼らを待ち受けていたのは、英仏百年戦争真っ只中で荒れ狂う凶暴な騎士たちだった。はたして彼らは無事に教授を救出して帰ってくることができるのか?

 上には「タイムマシン」と書いたけど、正確には「空間転送装置(?)」らしい。作者の展開する量子力学によると、自分達の存在する世界の他にも並列的に無数の世界が存在し、各世界には時間的つながりはないので、タイムマシンという概念は正確ではないとのこと。真性の文系人間の自分としては、このあたりの説明はまったく理解できなかった。
 肝心のストーリーの方は、次から次に色んな事件が起きてめまぐるしく場面が変わるという展開で、最初こそ楽しく読めるが、途中からはドタバタ喜劇を見せられているような感じで落ち着かない。もう少しじっくりと書いてもよかったと思う。



AIRFRAME  01/02/12 更新

 読み易さ 
 面白さ   

航空機を製造するノートン社に勤める主人公ケイシーは、同社の品質管理部の責任者に昇進する。その矢先、ノートン社の製造した機体が事故を起こし、死者3名、負傷者数十名を出してしまう。目前に中国政府との巨大な契約を控えている同社にとっての急務は、事故の原因を解明し、同社の航空機の安全性を立証することだった。ケイシーを含めた調査チームが急遽組まれるが、与えられた時間はわずかに1週間。必死に事故原因を追求するケイシーを待ち受けていたのは、事故をセンセーショナルに報道しようとするテレビ局と、巧みに仕組まれた社内上層部の罠だった。崖っぷちに立たされたケイシーは、いかにしてこの窮地を脱するのか?

 航空機業界を舞台とした本作は、航空機に関する専門用語が頻出するため、あまり読みやすいとは言えないが、著者一流のストーリー展開でグイグイと引きこまれる。
 飛行機事故はその規模が交通事故等に比べ圧倒的に大きいため、ニュース番組で報道されるたびに「飛行機は危険な乗り物だ」という概念が染み付いてしまっているが、実は飛行機ほど安全な乗り物はないというのが真実らしい。実際、本作でその徹底した安全管理対策を知り、改めて飛行機に対する認識を新たにした。普段何気なくクルマのハンドルを握っている人が飛行機に乗る際に不安になってしまうというのは、実はまったく逆であるべきだということだ。



A CASE OF NEED  01/01/13 更新

 読み易さ 
 面白さ   

ある病院に勤務する病理学者の主人公ジョン。同じ病院に勤務する親友のアーサーが違法である中絶手術を行っていることは、病院内では公然の秘密だった。ある日、病院内で偏屈者として知られるベテラン医師の娘が、中絶手術の失敗により失血死するという事件が起き、容疑者としてアーサーが逮捕されてしまう。親友の無実を確信するジョンは、単身真犯人探しに乗り出す。

 本作は"JEFFRY HUDSON"のペンネームで、著者が26歳の時に出版された作品。著者は当時医学生で、春休みを利用してわずか10日間で書き上げたらしい。本作では著者の医学に関する知識がふんだんに盛り込まれていて、その分かなり読み辛い。大筋を追うのに支障はないが、難解な医学用語が頻出するので多少ストレスを感じる。それにしても、これだけの作品をわずか10日間で書き上げるという著者は、陳腐な言い方だが、まさに「天才」と言うしかない。



DISCLOSURE  01/01/13 更新

 読み易さ 
 面白さ    お勧め

他会社との合併を目前に控えたコンピュータ機器会社に勤務するトーマス・サンダース。合併を機に副社長の座に就くはずだったトムだったが、実際にそのポストに就いたのは、トムのかつての恋人であるメレディス・ジョンソンだった。そのメレディスからセックスを強要されたトムはこれを断ると、激怒したメレディスは、トムからセクハラを受けたと会社の顧問弁護士に訴えることに。それを知ったトムも有能な女性弁護士を雇い、自分こそがセクハラの被害者であると訴える。合併を控え世間の評価に敏感になっている会社側は、なんとかしてトムの訴えを取り下げさせようと、様々な手段を講じ、最後にはトムを解雇させるべく罠を仕掛ける。無実の罪を着せられたトムの運命は?

 急速に成長するハイテク産業、ますます社会に進出する女性、それに伴い増加する「逆セクハラ」問題と、現代社会のエッセンスを巧みに取り入れた作品で面白い。汚い手を使うメレディスに腹を立てつつ、トムに思い切り感情移入しながら読んだ。多少コンピュータ用語が出てくる以外は非常に平易な文章なので、ペーパーバック初心者の方にもぜひお勧めしたい。
 それにしても、セクハラは本当に怖い。特に男性の場合、セクハラで訴えられれば、たとえそれが濡れ衣であったということが証明されても、一度失った信用や名誉はすぐに取り戻せるものではないだろう。自分もいつそうならないとも限らない。



SPHERE

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

南太平洋の海底300メートルに沈んでいるスペースクラフトが発見され、天体物理学者、動物学者、数学者、心理学者から構成される調査隊が海底での調査に乗り出す。海底に不時着してから少なくとも300年は経過しているというその物体は、はたしてエイリアンクラフトなのか、それとも未来からのタイムマシンなのか?

 さほど期待せずに読んだところ、面白かった。最初から引き込まれて、一気に読んだ。
 
SF物は時代設定が何百年も先のはるか未来であったり、自らの意思をもつスーパーコンピューターが登場したりと、突飛な設定が多く、あまり好きなジャンルではないが、この作品はリアルタイムの設定で、天体物理学、動物学、数学、心理学の各理論が分かりやすく展開されていて、突飛な設定でありながら説得力があり、違和感なく読める。著者の知識の広さ、深さは驚嘆の一言。面白さの評価はでもいいかなと思ったが、あんまり甘やかしてもいけないのでこのくらいにしておこう。



RISING SUN

 読み易さ 
 面白さ   

アメリカに在する日本企業で起こった殺人事件を舞台としたミステリー作品。事件を担当する若手刑事と、日本の文化に精通したベテラン刑事とのコンビが事件を捜査していくというストーリー。

 この作品が書かれたのはちょうど日本のバブル真っ盛りのときで、「強い円」をもって海外の企業買収を後先考えずに展開していた頃にあたる。著者の代表作ということでかなり期待して読んだところ、あまり面白くなかった。ストーリー展開が自分の好みに合わないということも当然あるのだろうが、外人が描く日本人像にどうしても違和感を覚えてしまうのも大きな原因だろう。



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