PATRICIA CORNWELL 




 法医学ミステリー「女性検屍官 ケイ・スカーペッタシリーズ」で有名なアメリカの女性作家。
 1956年にマイアミで生まれた作者は、大学で英文学を学んだのち、新聞社の事件記者として勤務する。その後、検屍局のコンピュータアナリストとして勤務し、このときの経験が1990年に発表されたデビュー作 "Postmortem" に大きく生きることになる。この作品で4つの賞を受賞し、一躍ベストセラー作家となる。
 このシリーズは法医学ミステリーということもあり、法医学に関する専門用語はもちろんのこと、コンピュータに関する用語もかなり出てくるため、あまり読みやすいとは言えない。シリーズ物ということで、各キャラクターがどう成長していくのかというところも、読みどころの一つ。




SCARPETTA'S WINTER TABLE  07/05/12更新

 読み易さ 
 面白さ   

クリスマス翌日の12/26に、マリーノとルーシーがケイの家を訪れてパーティーを開く。ケイが作る手の込んだピザと、マリーノが作る適当なエッグノックがパーティーの食卓を飾る。翌日ケイは実家の母親を訪ね、ルーシーはケイの家にATFの同僚を呼び、それぞれの新年を迎える。一方マリーノは、近所のいたずら少年を家に上げて、お得意のジャンクフードをご馳走する。やがて実家から帰ったケイは、ルーシーとその友人たちに特製シチューを振る舞おうと準備を始める。マリーノといたずら少年もケイの家に呼ばれ、特製シチューを囲んでにぎやかなパーティが始まる。

 タイトルからもわかるとおり、ケイの作る料理が主要なテーマになった、検屍官シリーズの番外編とでもいうべき作品。ケイの料理だけでなく、マリーノやルーシーが料理を作るシーンもあるが、それぞれのキャラクターの個性がよく出ていてなかなか面白い。巻末にレシピを書き留めるためのメモが付いているが、料理のレシピ本として使うには大雑把すぎる内容。
 ストーリーの方も大して盛り上がるわけではないが、いつものキャラクターが事件なしで登場するというのは、なかなか新鮮でいい。この先のシリーズはあまり読みたいとは思わないが、ミステリー抜きでマリーノやルーシーやケイが登場するストーリーならばぜひ読んでみたいと思う。それくらい、この個性的なキャラクターたちは魅力的だ。



THE LAST PRECINCT  02/04/24更新

 読み易さ 
 面白さ   

前作で連続殺人鬼の「狼男」ことシャンドンに襲われ、危機一髪で難を逃れたケイ。シャンドンに襲われた唯一の生き証人として、裁判での証言を女性検事のジェイミー・バーガーから依頼されるケイだが、シャンドンの弁護をマリーノの一人息子であるロッキーが務めると知り、動揺を隠し切れない。そんな折、前作でシャンドンに惨殺された女性副署長ブレイ殺害の嫌疑をかけられたケイは、大陪審に召喚されることに。次々に襲って来る災難に、ケイはついに検屍局長を辞任することを決意する。

 検屍官シリーズ第11作。
 本作ではケイが検屍局長の辞職を決意し、ルーシーは連邦機関から離れてATF の元上司と共に私設調査機関の "The Last Precinct" を立ち上げたりと、それぞれに大きな転換期を迎える。次作では、マリーノの息子のロッキーとケイとの対決が軸となるであろうことを予感させる。個人的には、一人取り残された我らがマリーノが、次作以降どういう行動に出るのかが気になるところ。
 この作品ではケイの年齢が40代半ばと言う設定になっているが、それはいくらなんでも反則だろう。ルーシーは28歳ということが作中で明記されているから、それから計算すると、ケイはすでに50代後半になっているはずだ。10歳以上もサバを読むのは、いくらなんでも反則だ。



BLACK NOTICE  02/03/16更新

 読み易さ 
 面白さ   

ベルギーからの貨物船から発見された男性の変死体。検屍を進めるケイは、国際的な犯罪組織が関与しているのではと睨み、インターポールに情報照会を依頼する。そんな折にマリーノの新しい上司として赴任した女性副署長のブレイは、私服刑事のマリーノを制服警官へと異動し、ケイに対しても卑劣な妨害工作を行ったりと、二人を放逐すべく様々な手段を講じる。ウエズレーの死から立ち直れずにいるケイだが、これらの困難に気丈に立ち向かって行く。

 検屍官シリーズ第10作。
 自分としては、本シリーズの最高傑作だと思う。ウエズレーの死に打ちひしがれるケイ、その死を自分の責任と感じて荒れるルーシー、現場の捜査から外されてやり場のない怒りを溜め込むマリーノ。それぞれのキャラクターの心情の機微が細かく描かれていて、ミステリー小説と言う枠を超えて楽しめる作品だ。
 本シリーズはどの作品を読んでも、ストレスとプレッシャーを抱える各キャラクターが、互いにその感情を相手にぶつけて、傷つき、傷つけ合いながら、それでも相手を気遣うという展開になっている。なんとも重い展開で、爽やかな読後感など望むべくもないが、それでも読ませてしまうリアリティがこのシリーズにはある。落ち込んでいるときに読むと、かえってやる気が出てくるかもしれない。



POINT OF ORIGIN  02/03/08更新

 読み易さ 
 面白さ   

メディア界の大物の自宅が放火され、その焼け跡から身元不明の若い女性の死体が発見されるという事件が発生する。FBI からの辞職を余儀なくされ、放火事件を扱う連邦機関の ATF に勤務するルーシーと共に事件を追うケイ。そんなケイのもとに、5年前に逮捕されたキャリー・グレチェンが警察病院から脱走したという報せが入る。ケイとルーシーに深い恨みを抱くキャリーは、恐るべき復讐計画を実行に移す。

 検屍官シリーズ第9作。
 シリーズ第5作で、ルーシーを罠にはめ、殺人鬼ゴールトの共犯として登場したルーシーの元恋人キャリー(女性)が本作のメインキャラクターとして登場する。ネタばらしをすると、ウエズレーはこのキャリーによって殺されてしまう。ケイもかなり歳を取ってきたので、二人の恋愛沙汰を描くのにも無理が出てきたという作者の意図があるのかもしれない。いずれにしても、ウエズレーがいなくなってしまうというのはかなり寂しい。



UNNATURAL EXPOSURE  02/02/27更新

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 面白さ   

ある日、ゴミ処理場に女性の胴体部分が捨てられるという事件が発生する。その手口から、アイルランドとアメリカで連続して発生している猟奇殺人犯の犯行かに思われたが、綿密な検屍により、模倣犯による犯行だと確信するケイ。さらに分析を進めるケイに、"deadoc" と名乗る人物がインターネットを介して接触を図ってきた。猟奇殺人犯を装う "deadoc" の真の目的とは?

 検屍官シリーズ第8作。
 このシリーズは医学用語やコンピュータ用語が頻出するため、あまり読みやすいとは言えないが、本作はこれまで以上に専門用語が頻出するせいで、少しばかりストレスを感じた。本作ではウエズレーが正式に離婚してケイに結婚を申し込むが、ケイはどうしても結婚に踏み切れない。マリーノとルーシーはそんな二人の仲に気を揉む。ラストは "I love you, Benton" というケイの台詞で締めくくられるものの、次作以降も一波瀾も二波瀾もありそうな含みを持たせている。しかし、メインキャラクターの誰一人として平凡な結婚生活を送っていないというのがある意味すごい。



CAUSE OF DEATH

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 面白さ   

大晦日の夕方、ケイはあるジャーナリストの死体を海底から引き揚げる。そのジャーナリストが追っていたのは何の事件なのか、ケイ自身が追っていくうちに、ある狂信的カルト集団の恐るべき計画に行き当たる。核施設を占拠したカルト集団に対してケイ、マリーノ、ウエズレー、ルーシーはどう立ち向かうのか?

 検屍官シリーズ第7作。
 本作ではもう50才を越えているはずのケイが、真冬の海に飛び込んで死体を引き揚げたり、単身カルト集団の立てこもる現場に乗り込んだりと、相変わらずの大活躍。そんなケイも、ウエズレーが離婚するかも知れないと知って心が揺れる。我らがマリーノはますますしぶく、燻し銀の魅力を発散する。ルーシーは、相変わらず気難し屋の同性愛者として描かれている。



FROM POTTER'S FIELD

 読み易さ 
 面白さ   

クリスマスのセントラルパークで身元不明の女性の全裸死体が発見される。その手口はまたしても殺人鬼ゴールトを連想させるものだった。事件を追跡するケイの身辺にも危険が及びゴールトとの闘いはニューヨークの地下鉄を舞台にクライマックスを迎える。

 検屍官シリーズ第6作。
 ゴールト3部作の最終部となる本作では、従来の謎解きというミステリーの部分は控え目になっていて、その分、ゴールトとの全面対決を軸に据えたサスペンスに重点が置かれている。ケイとウエズレーは不倫という境遇に悩みながらも、互いの愛を深めて行く。我らがマリーノは娘ほど年の離れた若い恋人を作りながら、日頃の激務と不摂生によるストレスとで肝心のときに役に立たず、結局はふられてしまうという、男にとってはなんとも辛い境遇に陥る。ルーシーは、正式な FBI の捜査官としてシステム開発に活躍する。なにはともあれ、頑張れマリーノ!



THE BODY FARM

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 面白さ   

平和な田舎町で11才の少女が誘拐・殺害される事件が発生する。その手口は明らかに殺人鬼ゴールトを連想させるものだった。”死体農場”と呼ばれる検屍技術研究所で真相解明に乗り出すケイ、マリーノ、ウエズレー。彼らの追っている人物は本当にゴールトなのか?

 検屍官シリーズ第5作。ゴールト3部作とも言うべきサブシリーズの第2部。
 本作からケイは
FBI 捜査官のウエズレーのもとで仕事をすることになり、妻子あるウエズレーと深い関係になってしまうという設定。警部に昇進した我らがマリーノはそんな2人の関係に嫉妬して荒れまくり、ついには被害者の少女の母親とできてしまい、捜査にも支障をきたしてしまう。大学卒業を間近に控えたルーシーは、FBI アカデミーの研修生としてネットワークシステムの開発に携わるが、同僚の女性にはめられて無実の罪を着せられてしまう。そんなルーシーは実は同性愛者らしい。とりあえず、こんな感じで次回に続く。



CRUEL AND UNUSUAL

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 面白さ   

強盗殺人の罪で処刑された一人の死刑囚。処刑が執行されてから間を置かず次々と発生する殺人事件。刑務所に拘留中の死刑囚と交流のあった女性の殺害現場から、その死刑囚本人の指紋が発見される。処刑されたはずの人間が殺人を犯す、そんなことがはたして有り得るのか? さらにケイの部下の女性も殺害され、その容疑者として疑われ窮地に陥るケイ。はたして真犯人は? そしてケイの運命は?

 検屍官シリーズ第4作。
 本作の真犯人ゴールトは寸前で取り逃がしてしまい、逮捕は次作以降に持ち越されるという展開。この殺人鬼ゴールトの追跡が次作、次々作のメインテーマになるらしい。そういった意味で、この作品は3部作の第1部と言えるのかもしれない。本作ではケイの恋人のマークがテロリストの仕掛けた爆弾に不運にも巻き込まれ、命を落としてしまい、我らがマリーノは予想通り妻に逃げられてしまう。17才になったルーシーは冬休みの間ケイの家に同居し、相変わらずのコンピュータの天才振りを発揮して、ウエズレーからも一目置かれる存在になる。メインのミステリーはもちろん、各キャラクターのストーリーからも目が離せない。




ALL THAT REMAINS

 読み易さ 
 面白さ   

相次ぐ若いカップルの遭難事件。いずれも行方不明となった数ヶ月後に森の中から白骨死体で発見される。5度目の遭難事件が発生し、カップルの少女の母親が有名な政府高官であることから、やがてケイは政治的圧力とマスコミの攻撃にさらされることに。

 検屍官シリーズ第3作。
 ケイとマークの恋愛は、マーク (FBI
捜査官) の赴任先が変わったために、頻繁に会うことが出来なくなる。前作までは友好的だったウエズレーとの関係が、多少険悪なものになり、高校2年生になったルーシーはチョイ役で登場するだけ。我らが愛すべきマリーノは、いきなり離婚の危機に立たされる。頑張れ、マリーノ!



BODY OF EVIDENCE

 読み易さ 
 面白さ   

女性作家の殺人事件から物語は始まる。何者かに怯えていた彼女はリゾート地に逃げていたが、自宅に戻ったその晩に殺害されてしまう。なぜあれほど恐れていた殺人者を彼女は家に招き入れたのか?

 検屍官シリーズ第2作。
 本作ではケイの大学時代の恋人マークが登場して、2人の恋が復活するという設定。警部補に昇進したマリーノは、相変わらずの傍若無人振り。ルーシーは本作には登場しない。とにかく緻密な構成で、物語の随所に様々な伏線が張られ、ラストに向かって一点に集約されていく展開は見事。



POSTMORTEM

 読み易さ 
 面白さ   

金曜日の深夜に限って残忍な手口で女性を襲う連続殺人事件が発生する。被害者の女性に共通する特徴はなく、現場に残された手掛かりを綿密に分析し、ケイ、マリーノ、ウエズレーらが犯人を追っていく。

 検屍官シリーズ第1作。1年間で4つの賞を受賞した、著者のデビュー作。
 この当時のマリーノは巡査部長でケイとはまったくソリが合わないが、物語が進むにつれて2人の間に信頼感が生まれてくる。姪のルーシーは、10才にして早くもその天才振りを発揮し、コンピュータを見事に使いこなして事件解決に一役買う。ケイは40才で離婚暦が1回ある独身女性という設定。このシリーズを読むのなら、絶対にこの作品から読まないとダメ。




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