THOMAS H. COOK 




 ミステリー作品を手がけるアメリカの作家。
 1947年にアラバマ州に生まれた著者は、歴史の教師から雑誌編集者を経て、1980年に "Blood Innocents" で作家デビューを果たす。ミステリー作品のみならず、ノンフィクション作品もいくつか発表しているらしい。文章のレベルは比較的容易なため、ペーパーバック初心者でも充分に読むことができる。
 関係ないけど、著者の作品の邦題タイトルは素敵なものが多く、訳者(出版社?)のセンスの良さを感じる。"Blood Innocents" が「鹿の死んだ夜」だったり、"Breakheart Hill" が「夏草の記憶」だったり。原題をそのまんま直訳した邦題タイトルも結構目にするが、タイトルはまさにその作品の「顔」なので、適切かつキャッチーなタイトルをつけないと、原作者に対して失礼ってもの。



PLACES IN THE DARK  04/11/10更新

 読み易さ 
 面白さ   

物語の舞台は1937年のメイン州。弁護士である兄カルビンと新聞社を経営する弟ウイリアムの元に、ドラという女性が現れる。情熱家であるウイリアムは、どことなく陰のあるドラを愛するようになる。その一方で、理論家のカルビンもドラに惹かれ、弟ウイリアムとの葛藤に悩む。そんなある日、ウイリアムが死体で発見され、その直後ドラも失踪してしまうという事件が発生する。ドラの行方を追うカルビンは、やがてドラの過去に隠された秘密を知ることになる。

 クック氏お得意の、過去と現在をクロスさせ、小出しに真実を明らかにしていくという展開の作品。このパターンは、最初に読んだときこそすごく新鮮だったが、3作目ともなるとやっぱり飽きる。というか、なんだか作者に小ばかにされているような感じさえする。それに、この作品のキャラクターもどうも好きになれない。ミステリーとして読むにしても、文学として読むにしても、いずれも中途半端だ。とはいえ、そこそこ楽しめるレベルではあると思う。



CHATAM SCHOOL AFFAIR  01/11/21更新

 読み易さ 
 面白さ   

主人公ヘンリーは、父親が校長を務める "CHATHAM SCHOOL" に通う高校生。新学期を迎えたCHATHAM SCHOOLに美術の教師として赴任して来たのは、若くて美しいエリザベス。ほどなく同僚の国語教師のレランドと深く愛し合うようになるエリザベスだが、レランドは妻子を持つ身。そんな2人を間近で見ていたヘンリーは、愛し合う2人を自由にしてやりたいと強く願うようになる。エリザベスが赴任してから1年経ったある夏の日、悲劇は起こった。その悲劇の陰にはヘンリーしか知らない秘密が。

 生まれ故郷の町で弁護士を営む主人公が、数十年前の "CHATHAM SCHOOL AFFAIR" を回想する、という形でストーリーは展開していく。一人称で過去を語って行く主人公が小出しに真実を明かしていくという展開で、このあたりは前作の "BREAKHEART HILL" とまったく同じ。前作では主人公の苦悩を直接本人が語って行くという展開だったが、この作品では客観的に他人の苦悩を観察するという展開なので、感情移入という点ではイマイチかもしれない。
 それにしても、著者の作品は読んでいて目の前にその光景がリアルに浮かび上がってくる感じで、情景描写が本当にうまい。個人的には寒々とした冬の描写が特にいいと思った。



BREAKHEART HILL  01/11/13更新

 読み易さ 
 面白さ    お勧め

主人公のベンは、アメリカ南部の小さな町に住む高校生。ある日ベンの通う高校に転校して来たケリー。2人は学校新聞の編集作業をしていくうちに仲良くなっていき、ベンは深くケリーを愛するようになるが、どうしてもあと一歩のところで自分の思いをケリーに打ち明けることが出来ず悶々とした日々を送る。そんなある夏の日、"Breakheart Hill" で無惨な姿で発見されたケリー。容疑者が起訴されて有罪判決を受けるが、事件の裏に潜む重要な秘密を知るベンは、30年もの間かたくなに沈黙を守ってきた。はたしてその秘密とは?

 生まれ故郷の町で開業医を営む主人公が、30年前の "Breakheart Hill" での事件を回想する、という形でストーリーが展開していく。一人称で過去を語って行く主人公が小出しに真実を明かしていくという展開で、焦れながらもどんどんとページをめくって行くという感じで、思いきり作者の術中にはまった。
 ラストのどんでん返しも秀逸だが、なにより主人公ベンの未熟で不器用な、しかし一途なケリーに対する想いがせつなく胸に迫る。自分も高校生の頃は、こんなふうに好きな女子のことを思いながら眠れぬ夜を明かしたことがあったなあ、などと思い出しながらノスタルジーに浸った。
 ミステリー作品としてはもちろんのこと、青春ラブストーリーとして読んでも充分に楽しめる作品。かなりお勧め。是非ご一読を。



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