RICHARD BACHMAN 



 ホラー小説を得意とするアメリカの作家。
 著者は「偽名癌」という奇病のために1985年に亡くなったが、著者の死後に未亡人が書斎から何作かの遺作を発見して発表したところ、たちまちのうちにベストセラーになったという、まさに異色の経歴を持つ作家。まだ未発表の作品があるとかないとか。
 なんて書くともっともらしいが、実はこれはすべて STEPHEN KING の創作で、RICHARD BACHMAN イコール STEPHEN KING である。著者に限らず複数のペンネームを使い分ける作家は少なくないが、ペンネームを変えることでそれまでとは違った傾向の作品を書きたい、ということなのか。まったく関係ないけど、RICHARD BACH は「カモメのジョナサン」の作者なので、お間違えのないよう。




ROADWORK   06/03/15更新

 読み易さ 
 面白さ   

地元のクリーニング工場で責任者を務めるバートは、新しく開通する道路のために工場の移転に関する仕事を任される。それと同時に、自宅も立ち退きのために引越しを迫られていた。しかし、新しい道路の開通に反対するバートは、工場の移転も自宅の引越しも拒否したため、仕事を辞めて離婚することになる。すべてを失い酒に溺れて自堕落な毎日を送るバートは、あくまでも立ち退きを拒否し、最後まで自分の家を守るべく、驚くべき手段に打って出る。

 なぜバートがこれほどまでに立ち退きを拒否するのか、その心理がよく理解できなかった。道路工事に反対する男の狂気、というワンテーマでストーリーを進めているわけだから、主人公を破滅にまで突き動かした動機はキッチリ書かないと、読んでいてまったく感情移入できない。
 とにかくこの作品は、ホラーとしてもミステリーとしても文学としても、すべてが中途半端。読んでいて少しも怖くないし、ハラハラドキドキもないし、感動もない。キングはこの作品で何を書きたかったのか、結局最後までよくわからなかった。



THINNER   03/07/07更新

 読み易さ 
 面白さ   

ある日不注意からジプシーの老婆をひき殺してしまった弁護士のハリック。友人の判事と警察署長の協力により、罪に問われることなく事故を処理したハリックだったが、ジプシー一族の長である老人から「痩せていく」という呪いを受けてしまう。老人の言葉通りに日々やせ衰えていくハリックは、判事と警察署長を訪ねるが、彼らも同じように奇病に体を蝕まれていた。もはや一刻の猶予も許されないハリックは、裏社会の実力者であるジネリの協力を得て、ジプシーの老人に呪いを解くように脅しをかける。果たしてハリックの運命は?

 食べても食べても痩せるなんて、下っ腹の肉が気になる人にとっては何とも羨ましい呪いかもしれない。なかなか痩せられなくて困っているそこのあなた、思い切ってジプシーの老人に呪いをかけてもらいなさい。
 それにしても、欧米人と日本人とでは、体重の感覚にかなり大きな差があるということを改めて感じた。身長6フィートの主人公が体重137ポンドにまで落ち込んだときに「ガリガリに病的なまでにやせ衰えた」という表現で書かれているが、日本人の感覚からすると、身長180cmで体重が65kgくらいだったら「病的」という表現を使うのはちょっとオーバーな気がする。この作品に限らず、「小柄で華奢な女性」が120ポンドもあったり、「引き締まって筋肉質な男性」が180ポンドもあったり、という記述を目にするたびに違和感を覚えてしまう。やはり、欧米人と日本人とは骨格の作りからして違うらしい。



THE LONG WALK  02/10/12更新

 読み易さ 
 面白さ    そこそこお勧め

全米から選抜されたティーンの少年100人が参加する「ロングウオーク」は、カナダとの国境をスタート地点として、ひたすら歩いて南下するだけの単純な競技。しかし、歩行スピードが時速4マイル以下になると警告を受け、4回目の警告を受けた瞬間に容赦なく射殺され、最後の一人になるまで続けられるという残酷な競技。幾日にも渡って過酷な条件下でのウオークが続き、次々と命を落としていく少年たち。この異常なレースを制するのは一体誰なのか?

 この作品は、キングが大学生の頃に書き上げた最初の長編らしい。出版年こそ「キャリー」の方が古いが、実質的には本作が彼の処女作になるのだろう。はっきり言って、かなり面白かった。
 もちろん、なぜこんなに危険な競技にいとも簡単に参加するのかという動機の部分の書き込みが浅いとか、ラストがあまりにも弱いとか、いくつか不満もあるが、そんなことが些細なことに思えるくらいにプロットが強烈。
 とにかく昼も夜も歩くのみ。足を止めればその場で射殺される。自分が生き残れる確率はわずかに1%。自分以外の人間は皆んな敵。それでも仲間の危機には命を投げ出して救出する。こんなに単純でしかも強烈なプロットを書くことができるのは、キング以外にいないだろう。やっぱりキングは凄い。



THE REGULATORS  01/05/09更新

 読み易さ 
 面白さ   

のどかな夏の昼下がり。舞台はオハイオ州の片田舎に在する「ポプラストリート」。奇妙な形の車がストリートに進入して来たその瞬間、新聞配達の少年が射殺されてしまい、たちまちのうちに平和なポプラストリートはパニックに陥る。周囲の風景が西部劇の映画に出て来る光景に一変したり、アニメ番組の「モトコップ」に登場するキャラクター達が銃を乱射したりと、信じられない光景が展開し、次々にストリートの住人たちは命を落としていく。この凄惨な事態を引き起こしたのは、ポプラストリートに住む自閉症の少年セス。しかし、この凄惨な事態を収拾出来るのも、セスしかいない。果たしてポプラストリートの住民の運命は?

 とにかく「凄惨」の一言。作品の最初から最後まで、殺害シーンのオンパレード。「もうそのくらいで勘弁して」なんて思ってもお構いなし。でも、こうまで殺害シーンを並べられると、後半はなんだかマヒしてくるからそれが逆に怖い。
 本作は STEPHEN KING の名前で同時に発表された"DESPERATION"と対を成す作品とのこと。この2冊を読んで初めて完結するらしい。チャンスがあれば、こちらの方も読んでみよう。



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