今朝、正夢を見た。

いや、まだその夢が現実に起こったわけではないから、正夢と言うべきではないのだろう。だが、きっと正夢になるだろうという確信がある。

これまでに2回正夢を見たことがある。
初めて見たのは、小学2年生の時。
クリスマスまであと1週間という日の夜、炬燵にあたりながら編物をしていた母が訊いた。
「ねえ、真ちゃんはサンタさんていると思う?」
その時の自分は何をしていたのだろうか。多分、おやつのミカンを食べながらテレビを見ていたような気がするが、今となっては良く思い出せない。
「うん、いると思う」
夢の中の自分がそう答えたことだけは、鮮明に覚えている。
クリスマスの日の朝、それまでずっと欲しかったポケット型のゲーム機が枕元に置かれているのを見て、大喜びをしている場面で目が覚めた。

「ねえ、真ちゃんはサンタさんていると思う?」
そう訊いた母は夢の中と同じように、炬燵にあたりながら編物をしていた。
あれ、これってこの前夢で見たのと同じだ。お母さんが夢の中と同じように編物をしてる。何かすごく不思議な感じ。

子供心にも、サンタクロースは架空の存在だということには薄々気付いていたような気がする。馬鹿だなあ、サンタなんていないんだよ、なんて得意気に話す上級生の言葉が頭の隅に引っ掛かっていたような。

「うん、いると思う」
こう答えたのは、前日に見た夢のせいだったろう。
サンタさんなんていないよ、と背伸びをして答えたい気持もあったが、何故か言えなかった。
そう答えてしまうと、せっかくのプレゼントがもらえないかも知れない、と幼い頭で考えたような気がする。
夢の中の自分は、「サンタさんはいる」と答えて望み通りのプレゼントをもらっていた。もしここで「サンタさんなんかいない」と答えてしまったら、ゲーム機はもらえないかも。そんなことを考えたのではなかったか。

1週間後のクリスマスの日の朝、夢で見た通りに、お目当てのゲーム機が枕元に置かれていた。
「やっぱりあの夢の通りになった。正夢だったんだ」と、その時に思ったかどうかは良く覚えていない。
ただ、不思議な体験をしたという思いだけは強烈に残った。


次に正夢を見たのは、高校2年生の時。
自分の通っていた高校には、アメリカにある姉妹校と、毎年交互に夏休みの間交換留学という形で5名の生徒をホームステイさせるというシステムがあった。その年はこちらの高校からアメリカをたずねる順番に当っていた。アメリカに興味のあった自分は、迷わず応募した。

まず最初に英語のペーパー試験が行われた。散々な出来に不合格を確信していたが、幸運にも合格。この試験で30人の志願者が10人にまで絞られた。残る関門は、校長と英語教師による面接試験。ここまで来た以上は、何としてもアメリカに行きたい。両親も苦しい家計をやりくりして、留学費用の50万円を用意してくれていた。

面接試験の前日に夢を見た。
校長室に入ると、校長と英語教師が待っていた。志望の動機や、アメリカに行ってしてみたいことなどを訊かれたように思うが、何しろ夢の中のことだから、あまり鮮明には覚えていない。ただ、最後に校長から訊かれた質問だけははっきりと覚えている。
「君は、この学校の生徒であることを、誇りに思っていますか?」
夢の中の自分は、迷わずに「はい」と答えていた。その返事に校長は微笑みながら頷いた。
それから数日後に、試験に合格したということを担任の教師から告げられて、思わず心の中で「やった!」と叫んでいる自分を見ながら目が醒めた。

「失礼します」と頭を下げて校長室に入ると、夢と同じように、校長と英語教師とが正面に座っていた。
緊張しながら、質問に答えていく。

「君は、この学校の生徒であることを、誇りに思っていますか?」
校長のこの言葉を聞いた瞬間、前日に見た夢を鮮明に思い出した。
今まで、この高校の生徒であることを誇りに思ったことなんて無い。いや、正確には、そんなことは意識したことが無かった。どこにでもある、地方の県立高校。進学率こそまずまずだったが、一流の進学校というわけでも無い。
ただ、夢の中の自分は迷わずに「はい」と答えていた。やはりここは夢に倣うべきだろう。そう思った瞬間に、「はい、誇りに思っています」と答える自分がいた。

結果は見事に合格。
おそらくこの時に、正夢の存在を確信したのではなかったか。小学生の時に見たあの夢も、きっと正夢だったに違いない。アメリカ留学のための荷造りをしながら、そう思った。


そして、今朝由美の夢を見た。
会社のそばにある喫茶店。コーヒーを飲みながらぽつりぽつりと会話を繋ぐ。気まずい雰囲気に耐えかねたかのように、由美がコーヒーカップから顔を上げて訊いた。
「ねえ、あの時に私から離れていったこと、後悔してる?」
その質問に、由美の視線を外さずに答える自分がいた。
「ああ、もちろん後悔してるよ」
その瞬間、由美の目が微笑んだ。
「ねえ、私達もう一度やり直さない?」
「良いのか?俺を許してくれるのか?」
ええ、と微笑んだ由美の笑顔で目が醒めた。


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