青春の貧乏自慢・続編 




ある読者の方から、「"青春の貧乏自慢"の続編を読みたい」というリクエストを頂いた。

あのエッセイは自分としては最低の出来だったので、こういうリクエストを頂くのは嬉しい反面、意外でもある。しかし、こういう貴重な読者の声にはきちんと応えねばなるまい。ということで、中途半端なままになってしまった最悪エッセイの後始末をしておこう。


<前回のあらすじ>
大学入学のために上京してきたその青年は貧乏だった。生協の150円カレーと、「大仙」のニラレバ定食ライス大盛を常食としながら、カーテンすらない部屋でつつましく暮らす青年。そんなある日、「学生ローン」の怪しい看板をくぐった青年は、思いがけず10万円もの借金を背負うことになったのである。


学生ローンを出た自分の財布には、ずっしりと重い10万円が入っていた。
しかし、それ以上に心がずっしりと重かった。何ゆえに10万円も借りてしまったのか?若さゆえの勢いという言葉で片付けるにはあまりにも軽率な行為だった。
まあ良いか。深いことを考えてもしようがない。金もできたことだし、思い切りオシャレしてダンパへ直行!
って、少しは軽率な行動を反省しなさい。


ここで、学生ローンのシステムについて簡単に触れておこう。

まず、金利の設定は月単位である。

その当時はバブル真っ盛りの頃だったから、月利 3% 〜 4% くらいが相場だった(デフレの今なら金利はもっと低いはずだ)。つまり、10万円を借りた場合の一ヶ月分の利息は3000円〜4000円ということになる。毎月最低でもこの利息だけは払わなければいけない。もし払わないと強面の取立屋が即飛んできて、「おらあ、ドア開けんかあ!居留守使うとるのはわかっとるんじゃあ!学生ローンをなめたらあかんでえ!」とアパートのドアを叩くことになる。

って、もちろん嘘。いくらなんでもそんなことはない。とは言え、入金の確認ができないと催促の電話がかかってきて、それでも払わないと、保証人(つまり親)のところに連絡が行く。この辺りはサラ金と同じである。まあ、これは役所でも銀行でも同じか。取立の手段が暴力的かそうでないかの違いだけで、催促がくるのはどの金貸しでも一緒である。

逆に、毎月最低限の利息さえ払っていれば何も言われない。と言うか、この「利息さえ払えば何も言われない」というのがミソである。業者としてはこれが一番おいしいのである。元本が減らなければ当然利息も減らない。元本が減らない限り、いつまでも理不尽な高利の利息をむしり取ることができるわけだ。
10万円の元本で 3.5% の利息とした場合、借り手に要求される最低ラインの返済額は3500円だ。一括返済は無理でも、毎月3500円の返済ならばなんとかなる。これは楽だ。今日びの小学生の小遣いでも払える。

しかし、毎月5千円づつでもコツコツと返して行けば、それに連れて当然利息の支払いも少なくなる。利息分プラスアルファの返済を続ける限りは、必ずゴールのある返済なのである。
一方、ギリギリの利息分の3500円しか払わない場合、束の間は楽できるが、永遠に元本は減らないのだ。まさに払い損。返済を長引かせるほど、財布は疲弊する。業者にとってこれほどおいしい客はいないのである。

そして、そのおいしい客が自分だった。
何しろ毎月の返済日には、利息分の3500円だけを抱えて、規則正しく学生ローンに通っていたのだから。

共通一次の数学の試験で200点満点の16点しか取れなかった数字オンチの自分にだって、これがいかに愚かな行為であるかくらいはわかっている。わかってはいるのだが、やはり目先の金にこだわってしまうのだ。
今月こそは元本を減らそうと決心して店に入るのだが、いざ財布から万札を取り出そうとすると、「とりあえず利息分の3500円だけ払っておけば、今夜は"つぼ八"でビールが飲めるぞ」と、自分の中の悪魔が耳元で囁くのである。

やむない事情でサラ金から金を借りているそこの貴方。毎月少しづつでもいいから、元本を減らそう。目先のはした金に惑わされてはいけない。いや、サラ金に限らず、住宅ローンでも同じだ。繰り上げ返済を心掛ければ、10年先、20年先にはバラ色の未来が待っている。とにかく借金は元本を減らすこと、これに尽きる。


しばらくの間は、毎月の利息を払うだけでお茶を濁していた自分だったが、そんな自分の目を覚ましてくれるショッキングな事件が起きた。

「学生ローン」から金を借りるという知恵は、友人のY君から教わったのだが、そのY君がいきなり「飛んだ」のだ。

自分と同じ大学デビューのY君は、とにかく金使いの荒い人間で、夜の六本木で5万や10万は軽く使ってしまうヤツだった。彼の実家はなかなかの資産家らしく、毎月の仕送りも20万円という、当時の自分からしたら、ちょっと考えられないくらいに裕福な生活を送っていた。
しかし、いくらなんでも物には限度ってものがある。毎晩のように盛り場に繰り出しては豪遊し、暇なときにはスロットルで散財するという生活を送れば、20万円の仕送りがあっても凌げるものではない。
冷静に考えれば、20万円なんて今の新入社員の初任給と変わらない。つまりは、慣れないスーツを着た新入社員が、毎晩盛り場に遊びに行くようなものだ。そうそう金が続くわけがない。物理的にも無理がある。

ではどうするか?
無ければ借りれば良い。そう、誰もが思い至る当然の結論にY君も達した。彼が当然のごとくに足を向けた先は「学生ローン」だった。
しかし、これが彼の悲劇の始まりだった。


さてと、ここまで書いたら疲れた。
一編のエッセイがあまり長くなっては、書く自分も疲れるが、読む方にとっても負担だろう。

ってことで、この続きはまた次回。

すまん、必ず次回は完結させるので、どうか容赦せい。

しかし文章ってものは、接続詞ひとつで簡単に方向が変わってしまう。書き始めた時に意図したのとは全く違う方向に走り出してしまった。まさかここまで「学生ローン」ネタを引っ張るつもりはなかったのだが。
許せ、Y君。




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