ニジマスの塩焼き 




最近の子供の遊びと言えば、何と言っても「ゲーム」です。子供に限らず大人もゲームにハマっている人は多いようですが。自分は全くゲームはしないのでその面白さは良くわかりませんが、大人がハマってしまうくらいですから、子供が夢中になるのも無理はないのかも知れません。しかし自分としては、古い考え方かもしれませんが「子供は元気に外で遊ぶべし」と思っています。
自分の田舎は文字通りの「ど田舎」だったので、遊びと言えば「三角ベース」(知ってますか?)や、「かくれんぼ」や「鬼ごっこ」、「魚釣り」や「栗拾い」など、クラシックな遊びばかりでした。子供はこういう遊びをするのが良い、と言うわけではありませんが、せめてゲームだけでは無く、こういった外でする遊びの楽しさも知って欲しいものだと思います。
と言うわけで、今回は自分の子供時代の遊びの話です。

当時小学6年生だった自分は、友達と一緒に3人で近所の神社横を流れる川で遊んでいました。すでに葉桜になっていたような記憶がありますから、多分ちょうど今くらいの時期のことだったと思います。いや、それとも秋口の頃だったかな?
「三角ベース」をしようと小学校の校庭に行ってみたところ、誰もいなかったので、川で魚獲りでもしようということになり、「五所神社」の川までチャリンコを飛ばしました。

川底に座っている石には、底からちょうど手を差し入れるだけの隙間が空いているものがあり、魚の住家になっていることがあります。そういう石を見つけて素手で魚をつかまえるというのが、当時のポピュラー(?)な遊びでした。ただ、そうやって獲れる魚はハヤ(ウグイとも言います)ばかりだったので、当然食用には適さないわけですから、純粋に「魚をつかまえる」という感触を楽しんでいたわけです。獲った魚はすぐに逃がしてあげていました。

靴を脱いで川に入り適当な石を物色し始めると、水深の浅い川面を優雅に泳ぐ、普段あまり見かけない魚の姿が目に入って来ました。
「をを?あれはニジマスじゃないか?」
川魚で食用に適する魚と言えば、代表的なのものは、イワナ・ヤマメ・アユ・ニジマスといったところでしょう。このうち、イワナ・ヤマメは渓流でも天然物はかなりレアな存在ですし、アユもまたしかりです。動きも非常に素早いので、とても素手でつかまえられるものではありません。
ところがニジマスはかなりの悪食(あくじき)で、しかも動きも川魚の割には緩慢ですから、釣るにしろつかまえるにしろ、絶好のターゲットです。しかも美味。悪ガキ3人組は早速「ニジマス捕獲大作戦」を開始しました。

上流からニジマスを追いたてて、逃げて来たニジマスを下流でキャッチするという原始的な作戦でしたが、これが面白いように獲れる(笑)。
もう夢中になって獲りました。自分の手の中で「ビチビチッ!」とニジマスが跳ねる感触はまさに一生物です。今でも鮮明に思い出すことが出来ます。
気付いてみると、川原には18匹のニジマスが跳ねていました。手近な枝を折って、公平に6匹づつのニジマスをその枝に通した悪ガキ3人組は、もう得意の絶頂です。これ見よがしに戦利品を抱えながら帰途につきました。

家に帰って誇らしげに戦利品を見せると、「ほー、凄いな。良くやった!」という家族のお褒めの言葉が。
その日の夕餉には、「ニジマスの塩焼」「ニジマスのたたき」「ニジマスのすり身」という、まさにニジマス尽くしの料理が並びました。自分で獲ったニジマスの味はまた格別です。「良くやったな。またこの調子で頑張れ!」という家族の暖かい言葉を噛み締めながら、ニジマスを噛み締める自分でした。

次の日登校して友達に昨日の様子を聞くと、自分と同じ様にニジマス尽くしの夕餉だった模様。昨日食べたニジマスの味をまた思い出しながら朝礼の列に並びました。
いつも通りのつまらない話を一通り終えた校長先生は、最後に一言お知らせがあります、としてこんなことを言ったのです。
「昨日、五所神社横の川にニジマスを放流しました。繁殖目的の放流ですから、しばらくはニジマスを釣ったり獲ったりはしないように」
をを?そんなこと言ったってもう食べちゃったよ。そういうことは前もって言ってくれないと。
罪悪感を感じつつも、昨日のことは秘密にしておこうと固く誓い合った悪ガキ3人組なのでした(笑)。




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